フランス全土が投機に熱中した「ミシシッピ計画」
「ミシシッピ計画」は、フランス摂政の信頼を得たスコットランド人ジョン・ローが、アメリカのルイジアナ(当時仏の植民地で、貴金属が豊富に眠るとされていた)との貿易独占権を持つ株式会社「ミシシッピ会社」を設立するという計画でした。
ローから「この計画は、フランスに莫大な富をもたらします」と聞かされた摂政は、喜んで設立特許状を交付しました。またローの事業計画と高配当(年間なんと40%を約束)に熱狂し、国民、貴族、議員までもが株式投機に熱中します。株価はどんどん高騰し、発行株式を求めた人々が、ローの自宅付近に群がったそうです。
しかし、株式売買が活発になりすぎて紙幣の増刷が必要になったとき、摂政が安直に不換紙幣(金銀との交換保証のない紙幣)を乱発したせいで、貨幣の信用そのものが崩れてしまいます。こうなると、フランスで紙幣を持とうという人がいなくなってしまいます。そして紙幣が信用を失えば、株式取引も事業計画も信用を失い、ついにはバブルがはじけてしまったのです。
最後は社長自ら売却、イギリス「南海泡沫事件」
イギリスで起こった「南海泡沫事件」も似たような話です。南米や太平洋諸島との独占貿易権を与えられた「南海会社」が、メキシコやペルーには金銀が無尽蔵にあるから儲かるぞという投機話に、イギリス国民が踊らされました。
この話で面白いのは、実は当時のイギリス人たちは、フランス人が「ミシシッピ計画」で大損したのを知っていたにもかかわらず、自らもバブルに落ちたという点です。きっとそこには、バブルに浮かれた国で必ず見られる根拠のない楽観論、つまり「バカな奴らと違って、自分たちは賢いから大丈夫」という集団心理があったのでしょう。
こうしてイギリス人も株式投機に熱中しますが、悪質なのは南海会社が株価を吊り上げるために、楽観論や嘘、噂話などを流布したことです。これで株価は急激に上がりますが、その異常な高騰ぶりに不安を覚えた分別ある投資家が、これはおかしいと株を売り始めました。そのとき信じられないことが起こったのです。
なんと南海会社の社長までもが、自社株を処分し始めたのです。これで不安は一気に広がり、バブルははじけてしまいました。