覚醒剤はヤクザの専売特許

覚醒剤は、あまり値崩れすることはない。なぜなら、覚醒剤は他の薬物とは異なり、その流通の利権をヤクザが掌握しているので、国内において価格統制がなされている。ヤクザは覚醒剤でシノぎ、半グレは大麻や違法薬物、処方薬でシノぐというのが、筆者がアングラ社会で見た感想である。

ダークな路地
写真=iStock.com/DenisTangneyJr
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ちなみに、ヤクザが覚醒剤に親しむのは無理もない。ヤクザでも好奇心からシャブに手を出し「こりゃ超気持ちいいわ」と、ズブズブの関係になる人がいる。彼らの多くは何らかの非行集団に関係していた過去があるから、日常生活において、比較的近いところにシャブがある。だから、つい、好奇心からツマミ食いしたくなるのも首肯できる。しかし、それ以外にも、ヤクザというサブカルチャーで生きていると、覚醒剤乱用者になるのは、やむを得ない事情があるのである。

以下、やむを得ない事情について、関東で暴力団の幹部をしていた方の語りを紹介する。

「ヤクザはね、シャブやんないといけない場面があり、2つの理由から(シャブの使用は)やむを得ないこともあるんだよ」と言う。

「理由の一つは、部屋住みの時(住み込みで雑用をさせられる時期)ね、若い衆は寝る時間がないんだよ。だって、親分が外出するのは夜でしょ(シマ内の店のハシゴなど)。車の中で待ってなきゃなんない。この待ってる間は眠たいんだよね。だから眠気覚ましにポンとやっちゃう。

もう一つの理由。それは、兄貴分から勧められるんだよ。でもね、嫌とは言えないでしょう。だって、ヤクザは親(分)のために命を捨てる覚悟がいるんだからね。そこで、もし断ったりしたら、『何やお前、われの命、組に預けたんちゃうんかい。死ぬんが怖いんか』って言われるよ。だから、ヤクザになると嫌でもシャブやんなきゃなんないんだよね」と。

覚醒剤の相場とかさ増しの正体

覚醒剤には相場がある。若干、値段が上下するが、1グラム(ワンジーという)を、末端の売人は2万~2万5000円ほどで入手する(6月~7月初旬現在・関西地区)。これを小分けして、覚醒剤使用者に売る。この時、フウタイとよばれるビニールに入れて「やりパケ(使用1回分の覚醒剤)」の状態で取引される。

近年、「やりパケ」一包あたりの分量は0.2~0.3グラムであったが、現在はハーフ(0.5グラム)で1万1000~1万3000円になっていることから、覚醒剤の値段が下がったことがわかる(純度が落ちたという声も聞かれる)。売買の際、このハーフがフウタイ(ビニールの包み)の重量込みか、薬物の内容のみかは、売人のサービス精神いかんであろう。覚醒剤中毒者となると、早く接種したい一心で、そこまで冷静に考えている余裕などないからだ。

覚醒剤の値段が下がった理由としては,大麻リキッドの人気に押されたことが理由と、裏社会歴が長い住民に聞いた。ただ、覚醒剤の価格は諸物価同様、時期によってはつり上げられるから、今後の価格推移は分からないとのこと。時期とはクリスマスや正月のイベントシーズンである。特に今夏はオリンピックが開催されるから、1カ月後の価格は分からないというのだ。