中国の国政には民主選挙はないが、特にウイグル族への警戒心は強い。なかにはIS(過激派組織「イスラム国」)などで戦闘訓練を受けたイスラム原理主義者もいて、中国全土でゲリラ活動を展開されてはたまらないというのだ。ウイグル族はトルコなどにも多いが、カザフスタン、ウズベキスタン、パキスタンほか近隣のイスラム教国と連携したら、中国は西側の国境が危うくなる。そのため、共産党は新疆ウイグル自治区の漢化が必要だと考えている。
非難の声が高まっても、習近平は蚊が刺したほどにしか感じない
かつては内モンゴルに同じ懸念があって、隣国のモンゴル国と連携する恐れがあった。だが、長年の漢化政策によって、現在の内モンゴルは漢化が進んだ。チベットでも時間をかけて漢化を進め、いまや(インドに幽閉の身の)ダライ・ラマがなんと言おうと、ほとんど犬の遠吠えのようになっている。両地区の漢化政策は共産党にとっては成功事例であり、新疆ウイグル自治区にも当てはめるつもりだ。20~30年かけて進める政策だから、国際的に非難の声が高まっても、習近平は蚊が刺したほどにしか感じないだろう。
アパレル会社が「新疆綿を購入しない」と宣言すれば、H&Mで見たように共産党の主導で一斉に不買運動が起こる。中国市場から締め出すことなど簡単なのだ。ファーストリテイリング(ユニクロ)など中国依存が大きい会社は、これが怖い。大々的に宣伝するのでなく、少しずつ新疆綿を減らしていくしか方法はないだろう。
以上の民族問題があるから、共産党は「3人まで」と人数制限のタガを外せないのだ。
少子化問題を解決するために、そのうち中国社会科学院(中国政府のシンクタンク)あたりが、(アメリカ・ユタ州のモルモン教徒が行っている)一夫多妻制を提言しだすかもしれない。「ゴマ信用で900以上は3人まで、850以上は2人までと結婚していい」という具合だ。中国のような国では、科学的に考えすぎて突飛な政策を打ち出すことがよくあるものだ。
人口減が心配される一方で、中国には人口が爆発的に増えた地域がある。深圳市だ。深圳は経済特区となった1979年当時、人口30万人ほどの漁村だったのが、いまや1400万人に達しようとしている。世界中のヒト・モノ・カネが行き交うメガリージョンとなったおかげで、人口が40倍も増えた。1人あたりGDPも中国でトップに立ち、IPOやユニコーンなどでも群を抜いている。深圳だけでなくアリババの本拠地の杭州や、北京のイノベーション特区である中関村周辺など、地域単位で見れば、人口減の問題などどこ吹く風の地域も存在するのだ。