ロシアが恐れるのは、世界の問題を米中二国で決定する「G2」体制だ。米中が主導する世界は、ロシアにとっては受け入れられない。とはいえ、2021年の国際通貨基金(IMF)統計によれば、ロシアの国内総生産(GDP)は約1兆4735ドルで、米国(約20兆9327ドル)の7%、中国(約14兆7228ドル)の10%にすぎない。経済力で劣るロシアが、世界のプレーヤーとしてどう存在感を発揮するか、プーチン大統領の手腕が問われる。
ロシアは「軍事同盟」に前向きも…
「ロシアは中国に圧迫されている」というバイデン発言は、旧ソ連地域をめぐる勢力争いでは的中しているかにみえる。
中国は「一帯一路」の拠点となる中央アジアへの進出を強め、貿易や投資ではロシアを圧倒する。ロシアの戦略的同盟国ベラルーシに対しても、中国は巨大な工業団地を建設し、経済影響下に置こうとしている。
中露の経済力格差は年々拡大し、旧ソ連圏が中国の通信規格に統一されるなど、中国経済圏に入りつつある。ロシアは中国の進出を苦々しく思っても、経済的には「弟分」だけに沈黙を強いられている。
中露善隣友好協力条約が現行条約のまま延長されることも、中露関係の限界を示唆した。
2001年にプーチン、江沢民両首脳が調印した中露条約は、「包括的戦略パートナーシップ」をうたっているが、軍事同盟条約ではなく、「有事協議」を明記しているだけだ。
プーチン大統領は19年10月、「中国との軍事同盟は理論的に想像できる。排除するつもりはない」と軍事同盟に前向きな発言をしていた。ロシア外務省は、中国に軍事同盟への格上げを働き掛けているとの情報もあった。
しかし、中国国防省は今年3月、「中露は同盟を結ばない原則を維持する」と軍事同盟を否定した。