「親友」と呼び合う中露の関係は?

米露首脳が中国についてどのような議論をしたか不明だが、バイデン発言自体は時代錯誤といえよう。

中露貿易は年間往復1000億ドルを超え、ロシアからの石油・天然ガスのパイプラインも稼働して相互依存経済が深まった。プーチン、習近平両首脳は「親友」と呼び合い、「中露関係は史上最良」と豪語する。両首脳は2019年、国際貿易における米ドルの優位性を低下させることを宣言し、米ドル以外での貿易決済を進めている。

中露は米国の一極支配を阻止することで結束しており、中露の相互依存が強まる中、ロシアには「中国に厳しく対処する」(バイデン)という発想はない。

米国に先を越された中国の焦り

とはいえ、米露首脳会談が米中首脳会談に先行したことで、中国には一定の焦りがあったようだ。中露首脳のオンライン会談は、中国側が持ち掛けたとみられる。

この中で習主席は、7月16日の中露条約20周年に際して、「この20年の中露の緊密な協力は新型国際関係の模範を打ち立てた」と称賛した。プーチン大統領も「20世紀の国家間協力の手本だ」と応じ、両首脳は条約を5年間延長することで合意した。

両首脳が会談後に発表した共同声明は、両国の軍事交流を深め、合同演習の回数と範囲を拡大し、軍管区間の交流や協力を拡大すると明記。「内政干渉のツールとして人権問題を利用することに反対する」と欧米の干渉に反発した。

共同声明はさらに、米国のミサイル防衛(MD)や中距離ミサイル配備計画に共同で反対するとし、反米での連携を確認した。

今度はロシアが危惧する番だ

ただし、今後は米中の本格対話が始まり、ロシアが危惧する番だ。

3月にアラスカで行われた米中外交トップ会談は、冒頭の激しい応酬が注目されたが、その後の実質協議では緊張緩和路線への転換も見てとれた。米中首脳の初会談は、10月末にローマで行われるG20(主要20カ国・地域)首脳会議の場が有力で、調整が本格化する。

米中対話の議題は、貿易・通商、半導体、環境、保健、台湾、海洋安保、東・南シナ海、サイバー安保、人権など多岐に及び、米露間の議題よりはるかに多い。バイデン大統領は「気候変動や保健衛生など協力できる分野は協力する」としている。