※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
本人 会社員 年収500万円
元妻 会社員 年収400万円住まい 新築分譲マンション
(本人の住宅ローン10万5000円/元妻の住宅ローン5万5000円 ※管理費・修繕積立金 月額2万円。それぞれ1万円ずつ負担)
離婚後も解消できない「ペアローン」問題
「男は仕事、女は家庭」という従来の性別役割分業が崩れ、現在では共働き世帯が1000万世帯超。性別にかかわらず共に稼ぎ、生活をシェアする家族の増加は、「家」にまつわるお金や所有意識も変化させています。
今回の相談者も、マイホーム購入にあたって夫婦間の住宅ローンを「平等」にしたいという希望から、ペアローンを選択しました。しかし、そのチョイスが生活を脅かしてしまったのです。丸山さん夫婦(仮名)の例から学んでいきたいと思います。
「丸山さん夫婦」と書きましたが、実は2人はすでに離婚しており、相談にいらしたのは、夫の航平さん(35歳/仮名)でした。すれ違いが離婚の原因だったそうですが、離婚後も解消できない問題として、ペアローンが重くのしかかっていたのです。
誤算を招いたのは、ローン返済が進んでいない段階での離婚
丸山元夫婦の世帯年収は航平さん500万円、ひとつ年下の元妻は400万円の計900万円で、30代のDINKSとしては珍しくないものでした。互いに自立し、「結婚後も財布は分けたい」という2人の希望から、住宅ローンもそれぞれが独立してローンを組む「ペアローン」にしたのです。
購入したのは東京都内の新築マンションで、6000万円。300万円の頭金をきっちり折半し、残りの5700万円のうち夫が3700万円、妻2000万円でペアローンを組みました。当時の世帯年収は900万円ですから、手取りにすると2人で毎月55万円ほど。毎月のローン返済金額は夫約10万5000円、妻約5万5000円です。管理費・修繕積立金も加味すると収入に対する住居費の割合は約32%で、都心部に家を買うなら許容範囲です。ただし、収入に対する理想的な住居費の割合は、25%といわれています。
しかし、2人は2年後に離婚。私がまず厳しいと感じたのは、まったくローン返済ができていない段階での離婚になってしまったことです。もちろん離婚は2人の幸せのために必要なことだったという前提で、あくまでFP的な視点での話です。
住宅ローンについては、固定金利1%の手堅い借り入れをしていました。また、丸山元夫婦が選択した住宅ローンの返済方法は「元利均等返済」でした。この返済方法は、毎月の返済額は一定ですが、返済当初ほど、返済額に占める利息の割合が大きいため、2年間ではほとんど元金が減っていない状態になります。