ゴルフのメジャー大会「全米女子オープン」で、19歳の笹生優花が初優勝した。『書斎のゴルフ』元編集長の本條強さんは「プレーオフは笹生優花と畑岡奈紗との日本人対決となった。その裏には、首位を走っていたレキシー・トンプソンの信じ難い崩壊があった」という――。
4番、ティーショットの行方を厳しい表情で見詰めるレキシー・トンプソン(米国)
写真=時事通信フォト
4番、ティーショットの行方を厳しい表情で見詰めるレキシー・トンプソン(米国)=2017年5月4日、茨城GC西

自分を抑えた我慢のゴルフをすると思われたが…

全米女子オープンゴルフで、笹生優花が日本人初、それも大会史上最年少タイ記録で優勝した。しかもこの優勝は畑岡奈紗との日本人対決によるもの。マスターズを制した松山英樹に次ぐ、日本ゴルフ界における歴史的快挙である。

しかし、冷静に考えてみると、この全米女子オープンでの笹生の優勝や畑岡との日本人対決は、首位を走っていたレキシー・トンプソンの信じ難いバックナインでの崩壊によって起きた幸運と言っていい。それは前半のハーフを1アンダーの35で上がっていながら、後半のハーフを5オーバーの41というトンプソンのスコアからも明らかである。

実力ナンバーワンのトンプソンは、なぜ崩れ落ちたのか。私的考察を試みたい。

トンプソンは3日目に5バーディ、ボギーフリーの66という完璧なゴルフを行使。2日目を終えて首位にいた笹生を1打逆転して首位に躍り出た。これは彼女の武器であるドライバーを封印、ティショットを刻んでフェアウェイキープを第一義に考えたことに他ならない。3日目を終えたあとに彼女は語っている。

「怒らずに自分を抑えてプレーできた。最終日は自分を追い詰めず、結果を考えずに楽しくプレーしたい。1打1打を大切にしていけば……」

その後の言葉は「必ず優勝できる」というものだったに違いない。私はこれらの言葉から最終日も3日目のような自分を抑えた我慢のゴルフをするものだと思っていた。