アメリカの中国研究は残念ながらレベルが低い
【安田】『中国vs.日本』(PHP新書)という本でも書いたのですが、どうやら欧米圏の諸国が中国を本気で警戒するようになったのは、せいぜい2018年ごろからです。かつて各国は「無理解」のまま中国を受け入れ、やがて「無理解」のまま嫌うようになりました。この変化のキーのひとつはコロナ流行ですが、要因としてはアメリカとの対立関係の深まりのほうが重要です。
【岡本】アメリカの中国研究はいったい何をやっているのかという感じですね。アメリカはもともと歴史が弱い国ではあるのですが、中国を対象とした地域研究や歴史研究は残念ながらレベルも低いし低調です。アメリカで中国研究をやっている人は華人系の方ばっかりだったりもするのです。これはコリアン・スタディーズにも似た傾向があります。本人たちや周囲はそう思っていないかもしれませんが、だとすると、いよいよ度し難いと思います。
【安田】当該の分野に対する人文系の学問の体力の弱さが、トンデモ説や陰謀論を生みやすい社会を作ってしまう、とは言えるかもしれません。(後編に続く)
編集部註:本対談は『中央公論』5月号向けに実施されたものを、安田氏がアレンジを加えてまとめなおしたものである。また、文中で物故者についてはすべて敬称を略した。