必要なのはオープンの場で議論を交わすプロセスだ
開催反対論、慎重論が根強い中、東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)の開催に向け、オリンピック選手団の入国など開会へ向けた準備が整いつつある。慎重論の一つが、政府の分科会会長を務める尾身茂氏ら専門家の提言だ。
6月18日、尾身会長ら専門家の有志はオリパラに伴う感染拡大のリスク評価についての提言をまとめ、大会組織委員会の橋本聖子会長と西村康稔経済再生担当大臣に提出した。提言の中で尾身会長らは、「無観客開催が最も感染拡大リスクが少なく望ましい」とした上で、観客を入れるなら現行の大規模イベントの開催基準よりも一段厳しい基準を採用することなどを政府や大会の主催者に求めた。
メルマガ前号では、正解が分からない課題については、見解が対立する者たちがオープンの場で激論を交わすことが、正解を導くプロセスになると論じた。
菅義偉政権、東京都、オリパラ組織委員会などのオリパラ執行部においては、まずそのようなプロセスが決定的に欠けている。このプロセスの欠如によって、オリパラを開催したときのリスクがよくわからなくなってしまっている。
新型コロナ対策分科会は、とにかくリスクが高いと主張し続け、感染症の専門家の多くもそのように主張している。いまでは菅政権がオリパラを中止する気配がまったくないので中止の声はかなり弱くなったが、少し前までは感染症の専門家たちはオリパラの中止・延期を強く主張していた。
しかし、分科会や感染症の専門家の意見が絶対的に正しいものではない。
分科会や感染症の専門家は、人流が増えれば感染拡大のリスクが高まるというロジックの一点張りだ。それが「どの程度の」高まりなのかの分析がない。
もし大会を中止しても国内の人流は止まらない
オリパラを中止にしても、国内の人流が完全にストップするわけではない。いまも飲食店などの特定業種は別として、おおむね通常の社会経済活動が営まれており、国内における人流はあるのである。つまりオリパラを中止にしても、当然、人流はあるのだ。
しかもその人流は数千万人という規模である。日本国内の人々は毎日、通勤し、通学し、買い物に出かけているのだ。
このオリパラを中止にしても生じる数千万人規模の人流と、オリパラをやったときに増えるだろう人流を比較して、オリパラをやったときの人流が致命的なものになるのかどうかをしっかりと分析しなければならない。
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本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》Vol.252(6月22日配信)から一部を抜粋したものです。気になった方はメールマガジン購読をご検討ください。今号は《【オリパラ開催「迷走」の理由】政治家、専門家、オリンピック関係者は何を間違えたか》特集です。