「言わなくてもわかってくれるはず」は甘えと過信

相手との距離が近くなると、何が好きなのか、何が嫌いなのか、こういうときはどんな反応をするのかなど、その人のことがいろいろとわかってきます。同様に、自分のことも相手がよく知ってくれている状態になっていきます。

そうするとつい、「この人なら、自分のことをわかってくれているはず」と思ってしまい、自分の気持ちや考えを言葉にしなくなってしまうのです。ですがこれは、甘えや過信に他なりません。

例えば、落ち込んでいて元気が出ないとき、相手がそんな自分の様子に気が付かずに関係のない話をしてきたら、「落ち込んでいるのに気が付いてくれないなんて」「いつも一緒にいるんだから察してよ」と思ってしまうことはないでしょうか。

あまり親しくない人であれば、こんな態度をされても傷ついたりイラつくことはありませんが、親しい相手になればなるほど、「言わなくてもわかってほしい」「自分への愛情があるなら、察してくれて当然だ」という独りよがりな感情が強くなってしまうのです。こんな不満が積み重なっていくと、ケンカになることが増え、関係を続けることが難しくなってしまいます。

「以心伝心」「阿吽の呼吸」は難しい

当たり前のことですが、どんなに長い時間一緒にいても、人と人が完全に分かり合えることはあり得ません。以心伝心、阿吽あうんの呼吸というのは素敵な理想ではありますが、やはり言葉にしなければ伝わらないのです。

察し合えるかどうかではなく、ちゃんと気持ちを話し合えるかどうかで、親しさや愛情の深さを測る方が、より良い関係を築いていけるのではないかと思います。

両親のけんかに悲しい表情をする少年
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相手との関係を長続きさせたければ、「なんで察してくれないの!」「言わなくてもわかってよ!」「私のことがわかってない」「あなたのことがわからない」などといった言葉でお互いを傷つけるのではなく、「こんなことがあった」「こんな風に思っている」というように、自分の考えや気持ちをしっかり言葉にして伝えていくことが大切です。

文句を言うときは「行動を憎んで、性格を憎まず」

相手との距離が近くなればなるほど、見えてくる欠点もあります。つい、「そういうところを直してよ」と言いたくなります。

しかし、注意したり文句を言うときは、言い方が重要です。相手の「行動」について不満を言うことは問題ありませんが、「性格」について不満を言うことが多くなってしまうと、言われた側の心を傷つけたり怒らせてしまうことになり、ケンカや別れの危険性が高くなります。