「国民と皇族をつなぐという意識が、宮内庁から薄れている」
君塚さんは『立憲君主制の現在』(新潮選書、2018年)でも各国王室のSNS活用を指摘、日本の皇室も「さらなる広報が必要」と訴えていた。が、事態は全く変わっていない。なぜなのか。名古屋大学の河西秀哉准教授が、宮内庁の変化を語っていた。ある取材で話を聞いた際、「国民と皇族をつなぐという意識が、宮内庁から薄れている」と指摘していた。
昭和の時代、宮内庁職員はテレビにも出演、国民の意識を感じ取り、皇族の素顔を伝えた。だが、昨今の宮内庁は「普通の官庁」。出向組も増え、皇族のことを一心に思う職員がいなくなっている、という指摘だった。
SNSひとつとっても、皇室にとっては簡単なことではないのだろう。皇族に信頼される肝の据わった職員が必要で、きっといないのだろうなと思う。が、だからしょうがない、とは思えない。コロナ禍と小室さんで、事はかなり切迫している。
宮内庁は「新たな広報体制づくり」を早急に進めるべき
発想を変えれば、今こそチャンスだと思う。「適応障害」という病名が2004年に公表されて以降、皇太子さま(当時)と雅子さまのテーマは「闘病」になった。だから、伝えられたお二人のエピソードは決して多くない。それはつまり、これからは発掘し放題、伝え放題ということでもある。
たとえば「愛子さま、愛馬とお別れ」の記事には陛下と雅子さまのエピソードも出てきた。愛馬の名前は「豊歓号」で、名付けの親はお二人だとあった。そもそも「豊歓号」の母馬は、お二人が1994年に中東を訪問した際、オマーン国王から贈られた雌馬「アハージージュ号」。アラビア語で「歓喜の歌」だから「豊歓号」にしたという。
この日、雅子さまは皇室の伝統行事「御養蚕始の儀」を終え、それから愛子さまと厩舎に行ったとも書かれていた。そうか、雅子さまは「伝統」と「母親」と「生物好きの自分」とを、このようにまとめているのだな。そんなふうに思い、少し楽しい気持ちになった。
宮内庁が早急に進めるべきは、新たな広報体制づくり。小室さん問題の収拾とともに、ぜひともよろしくお願いしたいと切に思っている。