ウッズの離婚会見が早々に終了させられたワケ
この簡易方式は、ウッズの離婚会見にも採用された。2009年暮れに起こった一連の不倫騒動から半年以上が経過した2010年の夏のある日、「ウッズが試合会場で会見を開き、離婚を発表する」という内々の知らせを受け、私は大慌てで夜行便に飛び乗って試合会場へ急行した。
詰め寄せたメディアは100人超。見慣れない記者やカメラマンの姿が目立ち、ゴルフ専門ではないゴシップ系のメディアが大勢紛れ込んでいることは明白だった。大荒れの会見になることが予想される状況だった。
それほど大人数のメディアが詰め寄せていたにも関わらず、いや大人数が待機していたからこそ、米ツアーはウッズの離婚発表の場を「会見」ではなく「フラッシュ・インタビュー」に切り替えた。
屋外は雨がしとしと降っており、ウッズのお立ち台だけは小さなテントの中に設けられていたが、記者やカメラマンは、満員電車のようなスシ詰め状態ゆえに傘を広げるスペースもない。全員、ずぶ濡れで立ちっぱなし。ウッズの声が聞こえるのは、せいぜい前方2、3列の記者だけで、質疑応答はあっという間に終えられた。
このようにゴルフの取材現場では、柔軟で臨機応変な対応が多く見られるようになっている。メディアからの要望があれば、ツアーは会見を組み、選手も応える。だが、同時にツアーは選手の事情や心情を考慮し、理解を示した上で、最大限、選手を守るための工夫を採り入れているのだ。
難しいのは、優勝者の会見ではなく、敗北した選手の会見
ゴルフの試合は通常4日間72ホールで行われ、いざ試合が始まると、その日の首位と2位の選手が会見に呼ばれるのが通例だ。
だが、首位に複数の選手が並んだ場合は、そのうちの何人かの会見が省略されたり、首位と大差がついている場合は2位の会見が省略されたりする。米ツアーの対応はここでもフレキシブルだ。
そして、会見に呼ばれた上位選手たちは、その日のプレーや翌日に向けての心意気、目標などを問われ、答える。その作業は「とことん追及する」ものではなく、淡々と進める確認作業に近い。
会見の中で一番の「難所」となるのは、最終日の勝敗が決した後の会見だ。優勝者の会見は、喜びにあふれて饒舌に語ることが多いから、ボリュームはあるが、さほど難しさはない。難しいのは、敗北した選手の会見だ。