投資で失敗してしまうのは、どんな人が多いのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「長時間労働で低収入の人ほど、時間をかけてコツコツお金を育てるのではなく、一山当てようとする傾向がある」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

ストレスを感じながらパソコンに向かう男性
写真=iStock.com/TwilightShow
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真面目な32歳エンジニアが150万円の借金

コロナ禍で収入が伸び悩む中、それをカバーするために投資を考える人もいるのではないでしょうか。ここ一年でつみたてNISAやiDeCoを始めた人は私の周りでも非常に多いです。

そんな中、袴田修吾さん(仮名)が選んだ投資は「FX」でした。しかし、私のもとにやってきたとき彼は150万円の借金を抱え、破産寸前の状態。仕事熱心で真面目な32歳のエンジニアがハマった「FX沼」について考えてみたいと思います。

つみたてNISAや外貨預金など、資産運用にはさまざまな種類が存在します。その中でFXを選ぶ人は、「一発逆転」狙いの人が多い印象を受けます。一昔前は株を選ぶ人も多かったですが、『四季報』を読んで銘柄や財務分析をするような勉強が必要な株は正直、手間がかかります。

一方のFXは、為替が円高にいくか円安にいくかという、ある意味「丁か半か」の世界。つまり、ギャンブル性が強い取引ともいえます。もちろん経済の長期トレンドを読む力は必要ですが、そういった知識がまったくない人でも、勘が良く、その時バーンと大きくかけられる元手と度胸があれば儲けられてしまう場合もある。だから間口が広いし、手っ取り早く稼げるイメージにつながっているのでしょう。

きっかけは「一獲千金 投資」の検索

袴田さんがFXを始めたきっかけはネットでした。「一獲千金 投資」といった検索ワードでヒットしたのが「海外FX」だったそう。

FXでポイントになるのが、「レバレッジ」です。FXは手元の資金(=証拠金)が少額でも、レバレッジをきかせることで証拠金の10倍、20倍の取引が可能になります。たとえば手元にある10万円に10倍のレバレッジをかけると100万円相当の取引が可能ということです(1ドル=100円の場合)。

国内FXの場合はレバレッジ規制があり、現在かけられるレバレッジは最大25倍までとなっています。しかし、袴田さんが手を出していたのは、“海外”FXでした。海外FXは500倍や800倍といった高いレバレッジをかけられます。しかも、元手となる証拠金はクレジットカード決済が可能。つまり、いまこの瞬間、手元に一銭もお金がなくても高額の取引を始められてしまうのです。パチンコだって手ぶらではできません。これが、非常に危ないのです。