雑談を組み込んでパターン化

そして、気がついたのは、「自分には『世間話』という工程が抜けていた」ということ。正直、当時の私は、世間話なんてただの時間の無駄だろうと思っていたので、先生方と雑談をしようなどという気は全くありませんでした。ただ、自分では納得していないものの、どんな営業に関連する本であっても世間話の重要性が説かれています。ここまでみんなが「必要だ」と言うのならば必要なはずです。そこで、「自分では無駄だと思っても、とりあえずパターンの中に取り入れてみよう」と決めました。

そのうち、確立されたのが、次のようなパターンでした。

①営業先についたら、まずは、お礼から入る
担当の先生に会ったら、「この前は、うちの薬を入れていただいてありがとうございました!」などのお礼から入る。お礼を言われて嫌がる人はいないので、会って早々から嫌な顔をされる確率が大幅ダウン。
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②時事ネタや世間話などを持ちだして、アイスブレイクする
「最近はああいう症例が話題になっていますが、こういう噂もあるんですよね」という医療業界の話から、「先生のお子さん、もう今年で受験生ですね。大変じゃないですか?」などプライベートな話まで、振ってみる。
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③本題の薬の話で営業する
「そして、先生。今回、こういう薬がうちの会社から発売されまして……」と、営業したい薬の話をしてみる。
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④クロージング
相手の機嫌が良い場合は、契約の話を持ち出してみる。
相手の機嫌が悪い場合は、諦めて撤退する。

一度パターンとして取り入れてしまえば、もう後はこちらのものです。特に悩むこともなく、どんどんリピートできるようになりました。「雑談」という工程をパターンに組み込んだおかげで、だんだん成果が上がっていき、改めて「雑談」の威力を思い知ったのです。

医療相談室の医師と患者
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

雑談の内容もパターン化

しかし、雑談というものはすごく難しいもので、いまだに私自身も得意ではありません。ただ、雑談のテーマ選びは、努力でなんとかクリアできます。特に、営業時の雑談については、自分の好みは全く無視して、とにかく相手の興味のありそうな話題に特化するようにパターン化していました。

相手の好きな話題をふれば、たいていの人は喜んでくれるので、そのテーマに関する質問を投げかけるだけでOKです。どうやって雑談の内容を選んでいたかというと、私の場合は、毎回先生との会話をメモしていたので、その中から、「この先生は釣りに興味があるんだな」「この先生はお子さんがいて、来年は受験なんだな」などと話題をピックアップしていました。

なお、なぜ私が先生との会話をメモするという大変手間のかかることをしていたかというと、私が問題社員だったために、上司から社内で唯一、「訪問先の先生とした会話を日報に書いておけ」と厳命を受けていたからです。この日報を書くのは非常に手間がかかるので本当に大変な思いをしていました。しかし、今にして思えば、それぞれの先生の好みがわかったのは、この日報のおかげでした。