透明の「近大マスク」リリース秘話
いくらリリースを出しても、単に概要を記すだけでは、メディアは興味を持ってくれません。そこで、リリースの素案を見て、広報担当者に書き方をアドバイスしています。それだけでなく、広報室のスタッフが協力して、ネタづくりをすることもあります。
その一例が、「近大マスク」です。2020年に理工学部で開発された透明のマスクで、大阪・ミナミの商店街に寄贈する予定でしたが、これだけではメディアに取り上げてもらえないと感じました。
そこで、広報室のスタッフが、商店街の担当者との打ち合わせに同行して、「寄贈するイベントのときに、飲食店の店員さんが装着している写真が撮れるようにしたい」「飲食店は大阪人なら誰でも知っているお好み焼きのお店がいい」と交渉したのです。そうして話をつけた上で、寄贈イベントのリリースを打ったところ、全国紙やテレビなど多様なメディアで紹介されました。
ネタづくりということで言えば、2014年には、広報室のスタッフが新商品のアイデアを考え、実現にこぎつけたこともありました。これまで余っていた近大マグロの中骨を活用する方法を水産研究所と相談して考え、エースコックさんに、中骨を使ったカップラーメンの開発を持ちかけたのです。商品の販売は好調で、第3弾まで発売されるビッグプロジェクトとなりました。広報の枠にとらわれず、さまざまなことに挑戦しています。
全て読まなくても概要がわかるリリース
プレスリリースの素案の質を上げるために、リリースのフォーマットを決めています。それに沿って作成すれば最低限必要な内容が載せられます。
また、定期的にそのフォーマットをブラッシュアップしています。他社のリリースも参考にしながら、記者の目に留まるように工夫しています。具体的には「内容のポイントを3つにまとめる」「写真を大きめに載せる」などによって、すべて読まなくても概要がわかるようにしました。また、リリースに関連する写真を自由にダウンロードできるサイトを設けて、QRコードでアクセスできるようにしました。記者に好評です。こうして作成したプレスリリースを、さまざまな記者クラブを使って配っているのも、私たちの広報活動の特徴です。
大阪科学・大学記者クラブをはじめ、官公庁や市役所などの複数の記者クラブを利用していて、PRするテーマに合わせて、リリースを配信しています。たとえば近大マグロのような水産系のネタなら、水産庁の記者クラブを利用しています。クラブによってルールが違うのですが、記者と直接話せるクラブでは、リリースをまくだけでなく、きちんと説明しています。
記者クラブを使う会社は少なくなっているようですが、うまく活用すると、自分たちが露出したいメディアでの記事掲載につながりやすくなります。発行部数の少ない業界紙も多いですが、今はその記事がウェブ上で広がり、他紙への掲載にもつながるので、十分にメリットがあります。