なぜドナルド・トランプはアメリカ大統領になれたのか。作家の佐藤優さんは「評論家の副島隆彦さんが指摘しているように、『私は低学歴の人たちが好きだ』という言葉が彼を大統領に導いた」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、佐藤優『悪の処世術』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

斜めのアングルのアメリカ合衆国議会議事堂
写真=iStock.com/Douglas Rissing
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大統領選に敗れたものの約7400万票を集めたドナルド・トランプ

アメリカ合衆国第45代大統領、ドナルド・トランプ。民主主義を標榜するかの地において、これほど「独裁者」の枕詞が似合う大統領は近年いなかったのではないだろうか。

現職に有利といわれる2期目を目指す2020年の大統領選挙では民主党候補のジョー・バイデンに敗れたものの、実に7400万もの票を集めた。

当初、トランプ陣営は負けを認めず「票が盗まれた」可能性を主張、投票結果の確定阻止の訴訟を次々と起こすもすべて棄却され、ついに負けが確定した。ホワイトハウスの去り際もきわめて特異だった。

2021年1月6日、ホワイトハウス前の抗議集会で「この選挙は盗まれた」と訴えるトランプに背中を押されるように、支持者たちは選挙結果の確認手続を行っていた連邦議会議事堂に乱入、警官隊と激しく衝突して死者を出す惨事となった。

大統領が呼びかけた抗議行動に連なる議会襲撃は、アメリカ国民に少なからずショックを与えた。暴動を扇動したとして、トランプは残り任期わずか1週間を残して弾劾訴追された。

ウクライナのゼレンスキー大統領に、軍事支援と引き換えにバイデンの不正疑惑の調査協力を要請したとされる「ウクライナ疑惑」に続いて二度目の弾劾訴追という前代未聞の事態である。

今回は上院での付託が大統領在任中には間に合わず、トランプがホワイトハウスを去ったあとも上院での弾劾裁判が続いた。この弾劾訴追、結果的には上院で無罪評決となったが、支持者にとってはエスタブリッシュメントに本音の戦いを挑み追放されたという英雄譚えいゆうたんの様相を呈していた。

トランプを支えた熱狂は何だったのか。国民の実に7000万人以上が、今回もトランプに票を投じていたという事実は何を意味するのか。