1万人のライバー育成を掲げる自治体も
ライブコマースが急速に普及していくなかで、桁違いの販売額を叩き出すスタープレーヤーやMCN(マルチチャンネルネットワーク:ライブ配信者のタレントマネジメントとコンテンツ制作配信をサポートする組織)が台頭し、のちほど紹介するが一部のスタープレーヤーが売上額の多くを占める結果となった。
MCNはライブコマースで稼げる組織と認知され、当初は数多くのMCNが資金調達を受けた。また、社会的な認知度が高まったこともあり、ライブコマースによる販売を地場産業にすべく、MCNなど関連企業を誘致する自治体も出てきている。
例えば広州市が行った「広州市商務局関于印発広州市直播電商発展行動方案(2020~2022年)」では、「2022年までに1つのライブコマース集中産業地区の建設、ライブストリーミングでリーダー企業10社の台頭、100社のMCNの育成、1000社のネットトレンドによって人気となるブランド形成、1万人のライバーの育成」を目標としている。
ライブコマースが普及するや企業も役所も動き出すあたり中国はアクションが早く、なにかと行動が遅いと評される日本も見習いたいところだ。
超人気ライバーがニセモノ商品を販売し謝罪
中国の市井の問題にニセモノ販売が挙げられる。
以前よりは安全な正規品が買えるようになったが、それでもニセモノは意図せず掴んでしまうことも少なくないようだ。ライブコマースにおいても信頼を得ていてちゃんとした仕入れチャンネルがあると思われている、人気ライバーですらニセモノを売ってしまっている。
11月11日のセール日「ダブルイレブン(独身の日)」に人気ライバー「辛巴(シン・バー)」氏が昼から夜まで行った1日の実況販売では、総額約19億元、日本円に換算すると約320億円を売り上げて話題になった。
ところが、同氏が販売した商品のひとつである「高級燕の巣」が高級品ではなく激安なニセモノだと判明しリコールに発展。
辛巴氏はその後、2021年3月27日に、広東省広州市の中心から北に離れた「黄石街道」で謝罪復帰イベントを行うべく、地元警察に頼んで周囲800mの道を封鎖し、安全圏から華々しい謝罪と復帰宣言の会見を行ったものの、「散々騙したのに復帰するのか」「黄石街道政府は人民の味方か? 辛巴の味方か?」とネットで話題になった。
中国のライブコマース市場では、辛巴をはじめ一部のライバーだけに注目と売り上げがあつまった。トップの女性ライバーのviyaは2021年3月だけで34億元分(日本円=約580億円)の販売額を記録、続く上位3人が同月に10億元(日本円=約170億円)以上を販売した。
またトップの50人が1億元(日本円=約17億円)を記録している。上位に集中した結果、その他大勢のライバー・MCNが儲からなくなり、新しくMCNを設立しづらい状況になったのだ。(※2)
その結果、弱小MCNによるレッドオーシャンが出来上がり、生き残りをかけて有象無象の配信者による偽物販売などが横行している。
2020年8月末には、ニセのブランド服を生配信で販売していたライバーの配信用スタジオに警察が訪れ、出頭を要請されるというニュースもあった。このほかにも目立たないニセモノ販売ニュースは無数に存在している。
(※2)https://baijiahao.baidu.com/s?id=1696281422830081225&wfr=spider&for=pc