「『開催ありき』の姿勢が随所に不信と破綻を生んでいる」

朝日社説は指摘する。

「感染爆発と定義されるステージ4の状態でも開催するのか。来日する数万人規模の関係者の行動をどう制御するのか。市民の生命・健康に影響を及ぼさずに、いかにして大会用の医療体制を整えるのか。こうした当然の疑問に対しても、『安全安心な大会が実現できるよう全力を尽くす』と言うだけで、質疑は全くかみあわなかった」

朝日社説は五輪の開催に慎重な立場を取っている。菅政権が強行に五輪を開催しようとしているから、菅首相が嫌いな朝日社説はなおさらその批判が強硬になる。

それにしてもこのまま開催して混乱を招くようでは、世界の国々から嘲笑される。日本の将来のためにもそんな事態だけは避けなければならない。

朝日社説は「世界から人が集い、交流し、理解を深め合うという五輪の最も大切な意義を果たせないことが確実になるなか、それでもなぜ大会を開くのか。社説は明らかにするよう求めてきたが、政府からも主催者からも説得力のある発信は今もってない」とも書き、最後にこう訴える。

「『開催ありき』の姿勢が随所に不信と破綻を生んでいる」

朝日社説が書くように「世界から人が集い、交流し、理解を深め合う」のがオリンピックだ。それができないようでは開催しても意味がない。菅首相はやはり、開催ありきのかたくなな態度を改めるべきである。

読売社説「選手に参加辞退を迫り、非難の矛先を向けるのは筋違い」

朝日社説と同じ5月12日付の読売新聞の社説は、「五輪開催の賛否 選手を批判するのは筋違いだ」という見出しを掲げ、白血病による長期の治療を経て五輪代表入りを決めた競泳女子の池江璃花子選手(20)に対してSNSで誹謗中傷が寄せられている問題を取り上げている。

読売社説の書き出しはこうだ。

「新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める声が上がっている」
「だからといって、選手に参加を辞退するよう迫ったり、非難の矛先を向けたりするのは筋違いである」

その通りだ。この問題を知ったとき、思わず怒りが込み上げてきた。深刻な病に打ち勝って、日本を代表するアスリートに返り咲いた選手を攻撃するような意見がどうして出るのか。決して許すことはできない。

読売社説は書く。

「池江選手は自身のツイッターで、五輪中止を求める声に対し、『仕方なく、当然のこと』と理解を示す一方、『私は何も変えることができない。それを選手個人に当てるのはとても苦しいです』と心境を吐露している」

愚かなメッセージにも理解を示す、池江氏の度量には頭が下がる。問題のメッセージを投稿した愚か者は、池江氏の心境をしっかり把握すべきである。