菅政権周辺も延期・中止に傾きつつある

菅首相は「五輪開催が大前提」というスタンスを変えようとしない。かたくなである。盛り上がりに欠け、大半の国民が開催に疑問を抱くなかでのこの態度には驚かされる。

このかたくなさゆえに、沙鴎一歩の目には菅政権が揺れ、延期・中止に傾いているように映る。実際、政権周辺や一部の与党議員からも中止の声が聞こえてくる。延期・中止に傾けば、あとはどの時点でだれがどのような形で表明するかである。

開催までの残り時間は少ない。日本中いや、世界中の人々がともに楽しむことができない五輪に何の意味があるのか。延期・中止の決断が遅れれば遅れるほど負担が増すのは、メダルの獲得を目指してトレーニングを重ねている選手たちである。菅首相は早急に政治決断すべきである。

東京五輪に向けた日大水泳部の壮行会後、撮影に応じる競泳日本代表の(左から)関海哉、長谷川涼香(東京ドーム)、池江璃花子(ルネサンス)、小堀倭加(セントラル戸塚)、本多灯(ATSC・YW)=2021年4月17日、東京都世田谷区
写真=時事通信フォト
東京五輪に向けた日大水泳部の壮行会後、撮影に応じる競泳日本代表の(左から)関海哉、長谷川涼香(東京ドーム)、池江璃花子(ルネサンス)、小堀倭加(セントラル戸塚)、本多灯(ATSC・YW)=2021年4月17日、東京都世田谷区

朝日社説「五輪の可否 開催ありき 破綻あらわ」

東京五輪をめぐっては、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞の4社が「オフィシャルパートナー」としてスポンサーとなっている。各紙はこれまで東京五輪の開催について慎重な書きぶりだったが、ここにきて論調が変わってきた。

5月12日付の朝日新聞の社説は「五輪の可否 開催ありき 破綻あらわ」との見出しを付けてこう書き出す。

「答弁を聞いて、いったいどれだけの人が納得しただろうか。わかったのは、滞りなく大会を開ける状況にはおよそないという厳然たる事実だ」
「おとといの衆参両院の予算委員会で、東京五輪・パラリンピックの開催の可否が大きな論点になった。ところが菅首相は、『主催者はIOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)、東京都、大会組織委員会』と、責任逃れとしか思えぬ発言を繰り返し、人々に届く言葉はついに発せられなかった」

「おとといの予算委員会」とは前述した10日の国会での審議を含む。朝日社説の「菅首相の責任逃れ」という指摘は分かる。菅首相は新型コロナの感染拡大と開催日の近づく五輪との間に挟まれ、身動きができなくなっているのだ。