新興国のモーターショーはコロナ禍に負けない人気

日本や欧米のモーターショーの多くが苦戦する一方で、まだまだ元気いっぱいなモーターショーもある。それが中国をはじめとする新興国のモーターショーだ。自動車マーケットとして、アメリカを抜いて世界一になった中国では、今もモーターショーに対する注目度は高い。そのため中国のモーターショーには中国の国内メーカーだけでなく、世界中の自動車メーカーが顔を揃える。日欧米のモーターショーとは対照的だ。

2018年北京のモーターショー
写真=鈴木ケンイチ
2018年北京のモーターショー

同じように、タイ、インドネシア、インドでもモーターショーの人気は高い。特に、アセアンなどの新興国のモーターショーは「新型車を見る」だけではなく、「新車を買うイベント」という側面もある。モーターショーでクルマを見比べて、その場(各メーカーのブース)にて商談を行う。各メーカーのブースの横には、ローンのための銀行の出張手続きコーナーまで用意されているのだ。「見る」だけでなく、「クルマを買う!」という熱気もアセアンのモーターショーにはプラスされているのだ。

2015年インドネシアのモーターショー
写真=鈴木ケンイチ
2015年インドネシアのモーターショー

そんな気合もあってか、中国はコロナ禍中の2020年9月に北京でのモーターショーを開催。2021年も4月に上海でモーターショーが開催されている。もちろん日系メーカーも参加しており、いくつもの新型車を発表している。また、タイでも2020年7月と12月にモーターショーを開催。インドも2020年2月に開催している。中止となったのは、インドネシアのモーターショーくらいであろう。新興国でのモーターショーは、コロナ禍に負けないほどの人気があるのだ。

マーケットごとに求められるクルマが変わっている

日本や欧米のモーターショーは、開催国以外の国のメーカーが参加を見送っていることが特徴だ。世界のブランドが並ぶのではなく、国内ブランドが中心のイベントに変わりつつあるのだ。

これまで「世界5大ショー」ともてはやされた、過去の日欧米のモーターショーには2つの機能があった。ひとつは国内市場に向けてのプロモーション・イベントであり、もうひとつが海外へ向けての発信の場だ。モーターショーで発表したコンセプトカーが数年後には量産車として世界中に販売される。そのお披露目の場がモーターショーであったのだ。ところがインターネットの普及やリーマンショック後の景気後退、中国など新興国の市場拡大などにより、世界5大ショーの存在感は、どんどん小さなものとなった。

また、「グローバルモデル」という1種類のクルマで世界各地の市場に対応する手法も、かつてほど重要視されなくなってきた。今では、多くのメーカーはグローバルモデルも用意するけれど、各市場にマッチする特別な製品をしっかりと準備するようになっている。アメリカで売れたクルマが中国で売れるわけではない。アメリカ、中国、欧州、日本、アセアンでは、それぞれ求められる製品が異なるのだ。

マーケットごとに求められる製品が違うのだから、本国で1回発表すれば良いのではなく、売れる市場で、それぞれに発表する必要がある。ドイツやフランス、アメリカのメーカーは、重要な中国市場に注力したい。おのずと、お互いのライバル国である日本やドイツ、フランスのモーターショーからは足が遠ざかるというものだろう。そうした変化が2018年ごろから一気に加速していたのだ。