国内のニーズに合わせて変化すれば生き残れる

では、この先はどうなるのであろうか。筆者として思うのは、世間は変化するものであり、決して元には戻らないということだ。モーターショーが世界へ発信する場という役割は、もう終わってしまうだろう。モーターショーがインターナショナルな存在ではなくなるのだ。東京をはじめ、デトロイトやパリなどの世界5大ショーが、世界中から注目されるような、かつての世界的な存在感を取り戻すことはもうない。5大ショーに世界中から記者が集まることもなく、当然、東京モーターショーでも、海外からの記者の姿は消え失せるだろう。

ただし、東京モーターショーが消えてなくなることはないはずだ。海外への発信という役割は終えたとしても、国内向けの販促プロモーションという機能は残る。東京モーターショーほど、人を集めるクルマ関連イベントはないのだ。とりわけ内容を「テーマパーク風」に変更して成功した前回「東京モーターショー2019」の成功は特筆すべきだろう。やり方次第で人を集めることは可能なのだ。

2019年の東京モーターショーは「テーマパーク風」で成功した
写真=鈴木ケンイチ
2019年の東京モーターショーは「テーマパーク風」で成功した

東京モーターショーは、日本の自動車産業のバロメーター

日本車は、いまだに世界と戦える第一線級の商品力を持つ数少ないメイド・イン・ジャパン製品だ。中国でもアメリカでも、欧州やアセアンでもライバルと互角以上に戦っている。その日本車の競争力が落ちることは、そのまま日本の国力低下、つまりは私たちの生活が貧しくなることにつながる。

東京モーターショーの浮沈は、そのまま日本の自動車産業の力を見るバロメーターになるのではないだろうか。筆者からすれば、東京モーターショーが元気であれば、まだまだ日本の自動車産業も、そして日本も見込みがあると思えるのだ。だからこそ、コロナ禍が沈静化した後には、東京モーターショーが盛り上がってほしいと切に思うばかりだ。

【関連記事】
「約7割が50代以上」日産の新型ノートに高齢者が殺到する2つの理由
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由
発売前からバカ売れ「ホンダの新型カブ」にバイク好きが飛びついたワケ
EVは時代遅れに「エンジンのまま完全カーボンフリー」を実現する"あるシナリオ"
40台以上を乗り換えてきたCKB横山剣が「あと1台ほしいトヨタ車」とはなにか