今年4月に電撃発表された「欧州スーパーリーグ構想」が事実上、頓挫した。金融アナリストの高橋克英さんは「Jリーグをはじめとする日本のプロスポーツリーグは、このケースから2つの視点を学ぶべきだ」という――。
2021年4月21日、イタリア・ローマのビルの壁に、ストリートアーティストLaika MCMLIVが描いた壁画には、ユベントスの会長がナイフでサッカーボールを刺している様子が描かれている。
写真=EPA/時事通信フォト
2021年4月21日、イタリア・ローマのビルの壁に、ストリートアーティストLaika MCMLIVが描いた壁画には、ユベントスの会長がナイフでサッカーボールを刺している様子が描かれている。

あっという間に頓挫した欧州スーパーリーグ構想

今年4月18日、12のビッグクラブの合意により、「欧州スーパーリーグ構想」が電撃発表された。これは、UEFA(欧州サッカー連盟)が主催するチャンピオンズリーグ(CL)に取って代わる大会となり得るため、UEFAやFIFA(国際サッカー連盟)が猛烈に抗議。さらに、選手やサポーター、ボリス・ジョンソン英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領も批判の声を上げる事態となった。

スーパーリーグ参加クラブには米国人オーナーが多いこと、米国の大手投資銀行JPモルガン・チェースが総額40億ユーロ(約5200億円)の資金を拠出するという報道もあり、欧州人のプライドを傷つけた側面もあったかもしれない。

こうした猛反発を受けて、スーパーリーグから離脱するクラブが相次ぎ、構想は頓挫することになった。世間には「スーパーリーグは各国の協会やリーグ、そして多くのサポーターを無視していた。金持ちビッグクラブによるビジネスリーグで、頓挫してよかった」という評価があるようだが、本当にそうなのだろうか。

ビジネスライクと批判されるのはUEFAも同じ

拝金主義かつ選手軽視でビジネスライクと批判されてきたのは、UEFAやFIFAの方も同じである。スーパーリーグに参加表明しなかった、ドイツのバイエルン・ミュンヘンやフランスのパリ・サンジェルマンが称賛されているが、彼ら自身も裕福なビッグクラブであり、実際のところは、後からスーパーリーグに合流するつもりだったとも噂される。同じ穴のムジナ同士の縄張り争いなのだ。

実際のところ、今年4月に発表されたフォーブスによる最新の「世界で最も価値のあるサッカークラブ」ランキングでは、バルセロナ、レアル・マドリードなど当初スーパーリーグに参加表明した全12クラブだけでなく、バイエルン・ミュンヘンとパリ・サンジェルマンもランクインしていた。今回ランキング入りした20クラブの平均価値は22億8000万ドルと、前回より30%高い。

コロナ禍でチケット収入が減少するものの、グローバルに広がる圧倒的なファン層の存在からメディア放映権など収入はさらに伸びる余地があると投資家に評価されているのだ。