デジタルの「オリジナル」を所有する意味

「所有」といっても所有しているのはあくまでデジタルデータであって、実際の作品をリアルで所有するのとは違う。もちろん、落札者がデータをダウンロードして印刷し、その作品を自分の居間に飾るといったようなことはできるが、そういう楽しみ方ではなく、「世界に一つしかないこのデータを持っているのは私です」と、ネット上で明らかにできるというところに価値が見いだされているというのだ。

しかし、アート作品ならともかく、初めてのツイートに値段が付くとは、どういうことだろう? 考えてみると、ツイッター創業者の初めての投稿は人類の歴史でもある。これから先、歴史がデジタルで記録されていくことを考えると、そのオリジナルデータを自分が所有しているということは、非常に価値のあるもののようにも思えてくる。

NFTに詳しい京都大学大学院特任准教授の山本康正氏は、デジタル空間が当たり前になってきている現代において、NFTは人々の承認欲求を満たすものだという。

例えば、『フォートナイト』や『あつまれ動物の森』といったオンラインゲームでは、バーチャル空間で他人とコミュニケーションすることで盛り上がっている。「そういった形でコミュニケーションする機会が増えれば増えるほど、バーチャルの中でデジタルアートなどを持っていることを人々に言いたいという、承認欲求が出てくるのです」

クリエーターにはありがたい仕組み

NFTのもう一つの特徴は、作品が売買されるたびにクリエーターにお金が入る仕組みを、NFTに書き込むことができるという点だ。今までのアート作品などは、最初に売った時には作家にお金が入るが、二次流通以降の売買には作家は関与できない。誰の手にその作品が渡ったのかはわからないし、もちろん収入にもならない。

ブロックチェーンの仕組みによって、自分が作った作品が今、誰の手にあるのかトラッキングできる。またNFTでは、例えば「売却されるたびにその金額の何%かがオリジナルの作家の手元に行く」といった設定もできるので、クリエーターにとってはありがたい仕組みでもある。そして、売ったデジタル作品は通常ネット上にそのまま残るため、他の人もその作品を見ることができる。