個人で500万円を借りて、毎月7万円超を6年かけて返済
「野良猫が人の住むエリアで子猫をたくさん産んでしまえば、保健所に連絡がいき、特に子猫は即刻、殺処分になります。そこにボランティアが介入することで、子猫の里親探しをするのです。ただ、“個人間のやりとり”では、譲渡できる数に限界があります。保護猫カフェならたくさんの猫を預かり、新しい家族につなげることができると思いました。奄美大島のノネコ問題は、そのきっかけでした」(服部さん)
2019年12月、服部さんが保護猫カフェの開業費としてクラウドファンディングで300万円を募ると、500人が参加し、1カ月もたたないうちに目標金額を達成した。しかし、月20万円の家賃やテナント契約金、内装費などを含めると開業資金には足りない。服部さんは個人で銀行から500万円の融資を受けた。月7万1000円、6年間で返済するという計画だ。
「『あまみのねこ引っ越し応援団』をはじめ、殺処分させたくないと、同じ気持ちで集まってくれる仲間がいたから頑張れました。実際に動き出したら、次々に『手伝うよ』と声をかけられました」(服部さん)
譲渡型猫カフェ「ケット・シー」をオープン
オープン前の2020年1月、私は服部さんに取材したが、その際「アルバイトじゃなくボランティアを集める」と聞き、心配になった。ボランティアがちゃんと“労働”してくれるのだろうか。とはいえ、人件費にお金をかけられない。不安そうな顔をする私に、あの時の服部さんは力強くこう言った。
「私は美容師なので、毎月の借金やテナント料はいざとなればお店から返します。それでも足りなかったらバイトをすればいいですから」
2020年4月5日、服部さんは譲渡型猫カフェ「ケット・シー」をオープンした。店名のケットシーはアイルランド民話に由来するもので、日本語に訳すとケット(Cait)=猫、シー(Sith)=妖精という意味があるという。カフェの裏側に15のケージを入れ、昼間は室内で猫を解放し、夜はケージに入れてそれぞれの部屋のような形で猫を休ませる。
「ケット・シー」がオープンした頃、世の中は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため緊急事態の最中だった。
「初日のカフェのお客さんは、ゼロ人でした」
その時の模様を思い出したように、服部さんが笑う。