わが子が自然に机に向かえるようにするコツ

【加藤】日々の勉強で、お子さんたちが自然に机に向かえるようにするコツってありましたか?

【佐藤】子供の反応が悪ければすぐやり方を変えることでしょうか。きょうだいでも性格がそれぞれ違うので、「ママはこれがいいと思う」って言っても反応が全然違う。例えば参考書にしても、長男はまじめなものが好きなのですが、次男は語呂合わせ系が好きなんですね。だから一生懸命、子供にウケそうな参考書を選んでいました。

【加藤】なるほど! 私は自分の本の中で、科学的に効果が検証されている子育て法をたくさん紹介しているのですが、それはあてはまる子が多いだけであって、その方法がすべての子にいいわけではないんですね。だから「うちの子には合わない方法だな」というときには、それはわが子の個性だと前向きに受け止めて、方法を変えるというのは大事ですね。

【佐藤】大事です。「この方法でうまくいかないのは子供が悪い」と思いがちですが、方法が悪いのです。子供が嫌がるときは何か理由があるんでよね。だからまず寄り添って、子供の気持ちを聞くこと。

【竹村】子供は楽しんでいないのに、親の思いだけでやらせてしまっていることって案外多いかもしれません。習い事など、子供は楽しんでいなくても、せっかく続けたのならやろうって。うちの息子はテニスをやっていたんですがコーチの存在は重要でした。有名だったり評判だったりする先生に習っている場合、親のほうがせっかく見てもらっているんだから、先生を変えるのはもったいないって思ってしまいますね。

【佐藤】子供の気持ちを最優先に考え、何が嫌なのか、何が引っかかっているのか聞くと対策が取れますね。

加藤紀子さん、竹村詠美さん
出所=『プレジデントFamily2021春号』
加藤紀子さん、竹村詠美さん

子供の進路に、親はどう関わるのがベストか

【加藤】子供の進路に、親はどんなふうに関わるのがいいと思いますか?

【佐藤】中学受験まではある程度親がリードするしかないと思います。小学生だとまだ経験不足なので先のことは考えられないから。中学受験で難関校を目指すなら一般的には3年間は必要なので、そこは親が計画を立てて進める必要があります。

ただ、うまくいかなくても、心配はいりません。私ね、よく中学受験の失敗を引きずる親御さんに「12歳で人生を終わらせるな」ってお話ししています。中・高・大学と入った学校を好きになるのが大事です。私が言うのも変ですけど、なんで世間は東大にこだわるのかなって思いますね。私は子供たちに、「大学は行きたいところに行くんじゃなくて、行けるところに行きなさい」って言ってきたんです。仕事も同じで、就ける仕事で立派に人生を歩んでいけって。行きたかった方面には未練が残るかもしれないけど、未練のない人生なんてないんです。未練こそ生きるための力にしないとね。

【加藤】置かれたところで咲きなさい、ということですね。

【竹村】「入れる学校に入る」という点は私も同じ考えです。うちは長男が昨年、高校受験だったんです。インターナショナルスクールに通っていて、アメリカの学校を受けているので受験のスタイルが日本とは違い、試験の点数だけで決まるわけではなく、エッセイを書いたり、課外活動に打ち込んだりすることも評価の対象になります。

学力はテストで測りますが、一番重要なのは面接やエッセイで「この学校に行きたい」という思いを伝え、自分はこの学校にふさわしい人物だとアピールできるかがカギになります。つまり、合格したら、学校が息子を必要だと認めてくれたということ。子供には「あなたがいいと思った学校を受けて、その中で合格をくれた学校に行こう」って言っていました。

【佐藤】点数が取れればいいわけではないんですね。エッセイの内容で落とされたりするんですか?

【竹村】はい。でも実際は何が理由で落とされるかはわからないんですよ。縁の要素が大きいかも。エッセイを書くには、まだ13、14歳くらいだと限られた経験しかない中で、本人なりに過去の出来事や感情を思い出してそのときのことを分析しないといけないんですよね。それは子供だけでは無理なので私も手伝いましたし、学校の先生などの力も借りました。息子はテニスに打ち込んでいたので、挫折や失敗もあって、それを軸にエッセイをまとめることができました。思春期で普段はあまりしゃべってくれないんですが、どんな学校がいいかなど、親子で話し合いました。半年ほどの受験の準備は親子の対話の良い機会でしたね。