アスリートがSNSをやるメリット、デメリット
スポーツ選手がSNSで発信することのメリットはこうした収入を得ることだけでない。自分を応援してくれるファンから熱いメッセージをエネルギーにすることができる。
例えば、女子マラソンの松田瑞生(ダイハツ)だ。彼女は、ファンの存在がどん底から這い上がるキッカケになったという。松田は2020年1月の大阪国際女子マラソンを好タイムで制して、東京五輪の代表内定を手中に収めかけた。しかし、同年3月の名古屋ウィメンズマラソンで一山麻緒(ワコール)が国内最高記録を出して日本代表に内定。松田は補欠にとどまり、代表発表会見では涙を流した。
それでも無数のファンが松田の背中を押した。「私はツイッターもインスタグラムもほとんど投稿していない。それなのに励ましのメッセージがめっちゃきた」と、代表落選後にツイッターのフォロワーが一気に4000人近くも増加。再起に向けて動き出した松田は2021年3月の名古屋ウィメンズマラソンを独走して、強さを見せつけている。
テレビや新聞などのメディアに提供するコメントではなく、純度100%の言葉でファンや関係者に直接「気持ち」を伝えることができるのもSNSのいい点だろう。
女性アスリートは卑猥な画像やセクハラまがいの言葉を送りつけられる
一方、デメリットもある。まず、自分の気持ちを表現するのはそう簡単ではない。文字ベースのSNSなら誤字脱字もありうるだろうし、意図せず誤解を招く表現になってしまうこともある。ツイッターは140字という文字制限がある。言葉足らずになり、うまく説明できないこともあるからだ。
何かしらの意見を投稿した場合、99人が賛同したとしても、1人の否定的なコメントが気になってしまい練習に影響が出てしまう人もいる。投稿内容が気に入らないアンチから“攻撃”を受けることもあり、それが加熱すると“炎上”につながっていく。なかには信念もなく反射的に挑発的な書き込みをする者もいる。マジメな選手ほど、きちんと返信する傾向があるため、心身ともに疲労してしまう。
また、名前が広く知られた存在になると、SNSでの投稿がネットニュースに取り上げられることがある。賞賛される記事ならいいが、曲解されたり、叩かれたりすることもある。
競技での結果が悪かったときや、競技とは無関係のトラブルなどに巻き込まれたときには、最新の投稿に対して、罵詈雑言のリプライが書き込まれるリスクもある。そんな状態になると平常心を保つのは難しくなるだろう。
とりわけ女性アスリートの場合はSNSのダイレクトメッセージなどから卑猥な画像や、セクハラまがいの言葉を送りつけられることがある。投稿写真から自宅を特定される危険性を指摘する人もいる。