住民を一括管理する中国独自のシステム

中国が新型コロナウイルスの封じ込めに成功した理由の1つに「住宅管理」がある。中国では、一団の土地に集合住宅を複数棟建設し、周りを塀でぐるりと囲んで「小区」という単位を形成する。高級マンションともなれば、「××花苑」「△△豪庭」などと洒落た名称がつく。

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写真=iStock.com/Liyao Xie
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数百人単位で構成されるこの小区は、住民を管理するための最末端の単位でもあり、中国のコロナ封じ込めが成功したのも、この小区が外出自粛など住民行動を徹底して管理したからに他ならない。この小区を管理するのは「社区」、社区を管理するのは「居民委員会」である。居民委員会は日本の“町内会”にも近いが、それ以上は、行政の区分となる。居民委員会を指導するのは行政の末端組織である「街道弁事処」であり、その上の組織は「区」、さらに「市」となる。

建国以来、国民の勤務先はすべてが国営企業だったため、所属する企業(単位=ダンウェイ)がそれぞれ国民(従業員)の管理・監視を行ってきた。しかし、改革開放政策の導入により、郷鎮企業や民営企業が現れ、さらに外資との合弁企業が増加するに従い、国家管理システムであった「単位管理」が限界となる。

初の「自治制度」に欧米も注目していたが…

そこで、国民管理のシステムは住民管理のシステムに移行し、「単位」に代わって「社区」の管理システムが都市部を中心に構築され、1990年以降、全国的に展開された。つまり、「勤務先による従業員の管理」は「居住先による住民の管理」に転換を遂げた。

社区は「コミュニティ」と訳され、自治と責任が求められるとも言われている。社区は、中央政府に集中した権力を地方に分散させる必要性から制度化され、住民の間に発生するもろもろの問題解決と、住民へのサービス提供を目的にしており、社区のあり方は、中国の政治制度改革の行方を占う上でひとつの指標になるとさえいわれた時代があった。

2000年代初頭には中国全土に15の「モデル社区」ができ、当時の朱鎔基首相は「社区は新たな社会福祉システムの基盤になる」と期待した。また、欧米の多くの研究者も、都市部における「草の根の政治改革」の象徴として社区の発展を注視した。