メイン口座の顧客は銀行に大きな収益をもたらす
給与の受け取り口座は銀行にとって特別な意味を持ちます。銀行は伝統的に「個人メイン口座」の獲得に力を入れています。メイン口座とは、その名の通り日常的な銀行取引においてメインに利用する口座のことです。メイン口座になる最も大きな要因となるのが、給与が振り込まれる受け取り口座です。
メインに利用する銀行口座を変えるには煩雑な手続きが生じるため、一度受け皿として指定された口座は長期間にわたってメイン口座となります。すると結婚や住宅購入、退職金、相続などのライフタイム・イベントのたびに、メイン口座の銀行に相談することになります。このため、メイン口座の顧客がもたらす銀行収益は一般的に非メイン口座を有する顧客の数倍から数十倍と言われています。
地銀が主とする個人取引は、デジタル化の影響を大きく受ける
また、蛇足ではありますが、銀行が重視する推進項目には「年金受け取り口座」もあります。定期的にキャッシュフローが発生するため、銀行取引の接点が常態化するためです。
国がデジタル化を推進しているわけですから、将来的に年金の受け取りもデジタル払いとなるかもしれません。今後も「デジタル世代」が次の高齢世代を形成することを展望すれば、さまざまな資金移動のデジタル化が銀行と個人顧客との接点を消滅させていく可能性はあります。つまり給与の受け取りを顧客接点とする銀行のリテール金融モデルの転換を迫る潜在性をはらんでいると考えるべきでしょう。
とりわけ、地銀などの地域金融機関の影響は無視できません。個人や中小企業などの「ミドル・リテール顧客」は、フィンテックを始めとするデジタリゼーションの波を受けやすいからです。
一方、メガバンクは大企業や資本市場を相手にするホールセールバンキングが中心のため、デジタリゼーションはコスト削減につながり、むしろ追い風です。