フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)が、過去に放送法の外資規制に違反していた問題で、4月9日、武田良太総務相は認定取り消しはできないという認識を示した。経済評論家の加谷珪一氏は「東北新社の外資規制違反では、衛星放送事業の認定が取り消されている。これはダブルスタンダードの可能性が否定できず、総務省の法律運用には問題がある」という――。
フジテレビ本社
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東北新社に端を発した「外資規制違反」問題

フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)が、過去に放送法の外資規制に違反していた問題で、4月9日、武田良太総務相は認定取り消しはできないという認識を示した。

総務省は、同じく外資規制に違反したとして東北新社の衛星放送事業の認定取り消しを発表したばかりだ。同じ理屈でいけばフジ・メディアHDも持株会社認定を取り消さなければならない。フジについては、その必要はないと判断したということだが、これはダブルスタンダードの可能性がある。

日本社会は法の運用が十分に成熟しておらず、杓子定規な解釈が横行したり、逆に恣意的な運用が行われることも多い。今回の一件をきっかけに、なぜ法規制を行うのか、その運用方法はどうあるべきなのか、あらためて議論する必要があるだろう。

フジ・メディアHDは2021年4月8日、2012年9月末から2014年3月末までにかけて、放送法が定める外国人議決権比率の制限である20%を超えていたと発表した。

放送法では外国人株主による報道機関の支配を防止するという観点から、持株会社や基幹放送事業者における外国人株主の議決権比率を20%未満にするよう求めている。規制の対象となるのは保有株数ではなく議決権数なので、単純に株数で計算することはできない。

いわゆる株式の持ち合いという形で相互に株式を保有している場合、互いに議決権を行使することができてしまうため、株式会社のガバナンスが適切に運用されない可能性がある。このため持ち合い分については議決権から控除しなければならない。