自主的に「勤務態度」をチェックする人たち

実際のところ、千葉の一件のような「不正打刻」はそれほど珍しくはなく、役所では全国さまざまな場所で行われていて、同じように発覚しては時折ニュースになっている。これが発覚する経緯はたいていの場合、頼まれてもいないのに公務員の「勤務態度」を年がら年中チェックする「善意の人」の報告によるところが大きい。

彼らはその持ち前の「善意」によって、職員通用口から出てくる時間をチェック、バス停や駅にやってくる時間をチェック、それらを集計した結果をわざわざ役所へとレポートしてくれるのである。

地域によっては不正打刻どころか「職務中に笑顔だった」「営業時間中に談笑していた」「腕組みしていた」「あくびをしていた」といったレベルにまで親切な連絡が届けられることすらあるという。

たまらず欠伸をする若い男性
写真=iStock.com/Tomwang112
※写真はイメージです

「小さな世直し」をした気分に浸れる

もちろん「善意の人」は、文字どおり悪意があってそうしているわけではなく、純然たる「善意」によってそうしている。「税金が適切に使われているか、公共心のあつい市民のひとりとしてしっかり監視しているのだ」といった、正義の使命感によって、そのような役割を無償で買って出ているのである。ゆえに、こうした通報によって実際になんらかの処分がなされれば、さながら自らの努力が実を結んで「小さな世直し」に成功したかのような、清々しい気分に浸れるというわけだ。

自分の「善意」が、たとえ微々たるものでも社会によい影響をもたらしたとなれば、さらに「親切心」を強めて、熱心に職員の勤務態度を見つめるようになる。このような「善意」の営みをライフワークにしているような人は、実はこの社会にはたくさんいる。けっして目には見えないし、気づかないこともあるが、彼らの「善意」はこの社会に満ち満ちている。