「西高」に進学させる前提での住宅購入

ここで基本的な事実を踏まえると、北大は無論旧帝大であり、確かに東北以北では絶大なる「高学歴」として認知されている。特に北海道にあっては、札幌市内にあって伝統的な公立進学校である「東西南北」を冠した道立高校から北大への進学率が群を抜いて高い。

私の父は、私がまだ物心つかない幼稚園時代から、この「東西南北」に遮二無二私を進学させるべく、私のあずかり知らないところで「東西南北」の中では2番手か3番手位に位置する北海道立札幌西高校(略:西高)に進学させる計画政策をプランニングしており、該西高の受験学区にとりわけ拘泥して、本来ならば田園生活を楽しめるような郊外における住宅購入の選択肢を一切排除して、札幌市のど真ん中に狭小な3LDKのマンションを買った(よってここが、現在でも私の実家になっている)。

自宅で孤独な少年
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そんな両親による計画的政策を露ほど知らない私は、小学校時代はプラモデル製作や“歴史群像、架空戦記(小説)”を耽読し、中学校では“普通”の地元公立中学に進学した。私は物事に研究熱心な方ではあるが、自分が「興味がない」と思った範囲にはまったく無知を貫き通す性分である。

しかし、それでも私の中学進学時の成績は全学年でも5指に入る優等生で、内申書的にも申し分のない評価を残した。これに私の両親は歓喜した。私が高校受験において、札幌西高→北大合格という既定路線の「夢」が見えたからである。

成績が落ちたとたん、虐待が始まった

だが私は、基本的に根が堕落的にできているので、次第に窮屈な受験を前提とした“ガリ勉”の性質から、カルチャーの世界に一向魅了されるようになった。そのきっかけを与えてくれたのが、当時にわかに社会現象となった冒頭エヴァである。エヴァから派生する文学、心理学、宗教全般、歴史学等に触手を伸ばして貪欲に知識を貪った私は、中学二年の段階で有意にその成績は低下した。

当たり前の事だが、アニメオタク的知識の膾炙に傾斜するとそれに反比例して定期テストの点数は落ちる。結果私は、中学3年時点で前述した「東西南北」の合格の目算はほぼ不可能になって、それより偏差値的には一等劣る公立の高校普通科に進学した。

これと時を同じくして、私の両親における虐待が開始された。私の両親は、私の学業成績が彼らの設計した進学校の合格基準に達していないと知ると、「お前(私)にかけた生活費や塾代、光熱費や小遣いを返せ」などと迫り、「お前(私)が漫画ばっかり見ている(私の両親は、漫画とアニメの区別がつかなかった)せいで成績が下がっているのなら、お前に投資した金銭が無駄になる」という罵詈ばり雑言をほとんど毎日のように浴びせてきた。

やおら当時、私の母が消化器系の難治疾患にかかると、その病状悪化の全ての原因を「お前(私)が勉強しないために、仏罰が下ったのだ」という意味不明な宗教的呪詛すら投げかけてくる。