若者同士の会話としては違和感がない
【鈴木さん】私も、CMを見て違和感を覚えた部分はまったくなくて、「炎上するほどの問題なのかな」って思いました。私自身、友達との会話に社会問題系のワードが出てきても、あのCMぐらいの軽いノリでしか話したことがないし。実際の友達との会話と同じ温度感だったので、ごく普通の、最近の若者を描いただけなのかなっていう印象です。ただ、広告としては何が言いたいのかわかりにくいですよね。
【坂本さん】私も同じで、最初に見たときは何が炎上しているのか全然わからなくて。批判している人からは「赤ちゃんを産むことが女性の幸せだと押しつけている」「若い女性が無知に描かれている」などの意見があったみたいですが、そう読み取る人もいるんだ! と驚いたくらいです。「ジェンダー平等を掲げるのが時代遅れ」というセリフも、私も登場人物の彼女と同じように思う時があります。まだ社会に出ていなくて差別されたこともないから、男女平等なんて当たり前っていう感覚。炎上する理由がわかりませんでした。
【鈴木さん】 上司のお子さんだったり、可愛らしい赤ちゃんをみたらCMと同じような反応をするのは当たり前だと思います。 どうしてこのCMの内容で『赤ちゃんを産むことが女性の幸せだと押しつけている』という風に感じてしまうのかわからなかったですし、そういった意見は過激だなと思いました。 ジェンダー問題に対して自分の意見があるからこそ敏感に感じとる人もいるんだなと思いました。
【原田】登場した女性のノリに関しては、若者のリアルを描かれていた、って意見も多いんだね。
また、産休明けでオフィスに子どもを連れて来た先輩について話すシーンは、むしろ出産を機に仕事を離れざるを得ない女性がこの国では未だに多いと言われている中、産休明けに子どもをオフィスに連れて行って良い会社って結構先進的な会社だと言えなくもないし、少なくとも主人公の彼女はそれを好意的に捉えているわけだから、企業選びで「雰囲気」を重視する傾向が強くなっているZ世代の若者たちにとっては、むしろ優しい雰囲気の会社だって思えるのかもしれないね。
ジェンダー平等を掲げるのが時代遅れっていうのも、男女格差の大きさを国別に比較した「ジェンダーギャップ指数2021」でも日本は世界156カ国中120位だったし、森会長の発言やオリンピッグや医学部入試の問題などを見ても明確ではあると思うのだけど、ジェンダー平等が当たり前に叫ばれる世の中で育ってきた今のZ世代たちにとっては、スローガンとしてあまりに前面に掲げられるのは、今更感を感じちゃう面もあるのかもしれないね。
社会に出たり、結婚したりするとまた違う意見になっていく可能性も高いような気もするけど、今回集まってくれたみんなはまだ学生だし、日常の生活ではジェンダーを意識する機会がまだ少ない面もあるのかもしれないね。あくまでも中高年に比べると、少なくともZ世代の同世代間の関係性においては、男女平等が大分実現されつつあるという背景も関係していそうだね。