そうであれば「景気回復&お金がジャブジャブ」というファンダメンタルによる金利上昇を中央銀行の国債爆買いという需要増で押さえ込むこむことなど無理だ。世界の中央銀行マンたちはそれがわかっている。だから国債購入増強などの施策は、口には出しても、実行はしないだろう。
たしかに今現在、米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長やイエレン財務長官の発言があるたびに長期金利上昇は一時的に止まる。彼らは、何かの施策を期待している国債保有者の期待に働きかけているのだ。
しかし為替介入と同様、長期金利を抑えようという施策は「抜かずの宝刀」にすぎない。一度抜いてしまえば、それ以降、効果が全くなくなるだろう。それがわかっているがゆえに中央銀行は何もしないと私は思う。
日銀は引き締めができないから、株価はどんどん上がる
1985年から1990年のバブルとその崩壊に見るまでもなく、株価の暴落には中央銀行の金融引き締めへの転換が決定的な影響を与える。しかしながら、日銀は金融引き締めを未来永劫できない。前回の拙稿にも書いた通り、引き締めれば、国債価格の暴落により、保有国債に大きな評価損が生じ、日銀自身が債務超過に陥り、自身が存続の危機を迎えてしまうからだ。
他国では、ファンダメンタルズを反映して長期金利が上昇する一方、日本では、日銀が、自身の存亡をかけて長期金利を抑え込めば、日米長期金利差は拡大する。それを反映してドル/円は大幅に上昇するだろう。字数の関係で、その理由はまたの機会に譲りたい。または『藤巻健史の資産運用大全』(幻冬舎新書)をご参照いただきたい。
長期金利が日銀により抑え込まれ、かつ円安/ドル高が進むなら、米国長期金利が上昇したとしても、日経平均はそれなりに上昇を継続するのかもしれない。
日銀にはインフレを抑え込む手段が残されていない
しかしながら、円安・ドル高が進行すれば、日本の景気は上昇し、インフレも加速していく。万が一、円安を反映して日本株が高いままで推移していけば、バブル期同様、資産効果(資産を持っている人が金持ちになったつもりで消費を増やす。それを見て株価がさらに上昇するという好循環)が景気をさらに押し上げるだろう。
そうなるといくら日銀が円の長期金利を抑え込もうとしても長期金利は上昇せざるを得ない。要は他国の長期金利が上昇しているとき、日本の金利だけが、その流れに逆らうことなど無理な話なのだ。日銀が日本国債の現物市場でモンスターであっても現物債より大きな先物市場が存在するからだ。