結局はすったもんだの挙句、何とか取引枠は維持されたが、私はこの時、本店審査部のシビアさを感じとったものだ。その後のJPモルガン勤務時代の15年間、株主を守るために取引相手の信用審査が極めて厳しいことを身をもって感じとった。
そして日本円の価値暴落が起きる
そのシビアな審査部が、まさか前世紀の遺物である簿価会計で日銀を審査するとは思えない。日銀が「簿価会計で会計を行っている」といっても審査するほうは、自分自身の基準で審査をする。
ましてや債務超過に落ちた日銀を、日銀自身が国債購入で刷り出したお金で、政府が日銀に資金補填したところで、日銀に十分な信用力ありとの判断をするとは到底思えない。「なんじゃそれ?」の世界である。
約束手形というブツの交換は手形交換所で行われていても、その資金の決済は日銀当座預金を通じて行われる。国債取引の決済もドル円取引の円決済もすべてが日銀当座預金を通して行われる。この認識は重要だ。
外資が日銀との取引を辞める、すなわち日銀当座預金を廃するとは日本からの総撤退を意味する。
ドル/円でいえば、外資はドルを取引相手に渡しても、(日銀当座預金勘定がないのだから)円を受け取る手段がない。対価を受け取れないのにドルを売ってくれるはずがないのだ。日本はドルの調達手段を失う。それは円の地方通貨化を意味し、価値暴落(=ハイパーインフレ)を招く。
自分自身で自分と家族を守れ
以上が「米国のさらなる長期金利上昇」が「日本売り」を誘発するメカニズムだ。
この危機を全く認識していないのか、認識していても打つ手がないから放置しているのか知らないが、政治は全くこの点に触れない。放漫財政でここまで赤字をため、かつ危機を先延ばしにしてきた政治の無策を被るのがまっぴらなら、自分で自分を守る術を考えねばならない。
国際通貨基金(IMF)によると、21年の一般政府債務残高の対国内総生産(GDP)比は日本258.7%、米国132.5%、ドイツ69.9%で、日本は世界ダントツの悪さだ。税収はほぼGDPに比例するから、日本はもはや税収で借金を返済することは無理なのだ。この数字が意味することは重い。