これは、なにも一般の独学者だけではなく、アカデミズム全般にもいえるかもしれません。自分の考えとはちがう人との論争が起きると、本来はまず相手の考え方を受け入れるのがフェアな態度ですが、アカデミズムの場にいる人たちがそれをどれだけ実践できているかは、やや疑問があるといわざるを得ません。

いずれにせよ、自分と異なる考え方や自分の仮説とはちがうものも受け入れなければ、健全な学びにはなりません。独学するうえで非常に重要で、覚えておきたい心得のひとつです。

勉強し学ぶことで、他者の「人格のレパートリー」を活用できる

わたしたちは、勉強し学ぶことで、自分ではない他者の意見を受け入れることができます。

齋藤孝・中野信子・山口真由『人生の武器になる 「超」勉強力』(プレジデント社)
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脳の面白い働きのひとつは、自分ではない人の考え方をコピーし、まるでその人のように振る舞えるところです。「あの人だったらどう考えるだろう?」と想像するのは多くの人がやっていると思いますが、たくさん勉強すれば、他者の「人格のレパートリー」が、自分のなかにたくさんできていきます。

なにか不測の事態が起こった際、「こんなとき徳川家康ならどうしただろう?」と考えることもできます。「渋沢栄一だったら難局をどうこらえただろう? ナポレオンなら? エリザベス1世なら……?」。勉強するほど人格のレパートリーが増えるわけですから、これはとても頼もしい力ではないでしょうか。

また、実際の頭のよさとは関係なく、自分ではない人の意見を活用すれば、頭がいい人のようにも振る舞えます。こんなお得なことがあるでしょうか?

勉強すると、自分のなかにいろいろな判断基準ができ、歴史を参考にすれば、すでに社会実験が終わっているので、ある程度未来も予測できます。そうしたことも、自分の選択に自信を持たせてくれる要素として働くでしょう。

学ぶことによって、わたしたちは、ほかのたくさんの人と一緒に生きているような広がりを得られます。

それは、困難な時代にもあなたを勇気づけ、この世を生き抜いていく力を高めてくれるでしょう。

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