「待っている人が少ない」列に並んではいけない

みなさんは、「混んでいる時間帯のスーパーで、どのレジに並ぶのか?」をどのようにして決めていますか?

待っている人数が少ない
待っている人のかごの中身が少ない
レジ係の手際の良さ

一番多い回答は、「待っている人数が少ない」ではないでしょうか?

しかし、この選び方は、あまりおすすめできません。のちほど説明しますが、待ち人数よりも「そのレジがどれだけスムーズに流れているか」のほうが、レジ戦争では大事だからです。飲食店などでは、このことを「回転率」といいます。

お昼時の立ち食いそば屋さんは、行列ができていたとしても、案外すぐに食べられます。これは回転率がいいからです。レジにも、この回転率なるものが存在します。正確には、回転率ではなく「そのレジの混み具合」を計算します。

ここからちょっとした計算が出てきますが、苦手な方は読み飛ばしていただいてかまいません。結論だけを知りたい方は、後述の「レジがスムーズかを見極めるポイント」をご覧ください。

混み具合は、「そのレジにお客さんがどのくらい頻繁にくるか(A)」「レジ係の手際の良さ(B)」で決まります。もう少し正確に表現すると、

A:1時間のうちにお客さんが何人くるか
÷
B:1時間のうちに何人のお客さんの会計ができるか
=レジの混み具合(稼働率)

この二つの変数を使って、推定待ち時間を計算するのが待ち行列理論です。

どんなレジに並ぶべきなのか

お客さんをさばける数(B)に対して、それを上回るお客さん(A)が並んでいると、A/Bは1を超えます。これを、その「レジの稼働率」ともいいます。稼働率が100%のとき、1時間レジが休みなく動いている状態ということになります。

これが100%を超えると、レジでいくらお客さんをさばいてもさばいても行列が長くなっていく状態、ということになりますが、普通はこの稼働率は100%未満になっているはずです。

例えば、以下のような状況を想定します。

あるスーパーマーケットの夜8時台では、平均5分間隔でランダムにお客さんが会計にくる。稼働しているレジの台数は1台であり、1時間で30人の会計ができる。この状況のときの稼働率はいくつでしょうか?

A:1時間のうちに、お客さんが何人来るか→60÷5=12人
B:1時間のうちに、何人のお客さんの会計ができるか→30人

この時の稼働率は、「A/B=12/30=0.4」。稼働率は、40%[夜8時台では40%(24分)レジが稼働している状態]ということになります。稼働率が100%未満ということは、お客さんが並ぶペースよりもレジの処理能力のほうが高いので、一時的に2人以上並んでも「いずれ、行列は収まる」という状態です。

参考にすべきなのはレジの回転率

レジ待ち時間を決めるのは、「そのレジにお客さんがどのくらい頻繁に来るか(A)」「レジ係の手際の良さ(B)」ということがわかりましたが、多くの人は「どのレジに並ぶか」を考えるとき、まずは「そのレジに並んでいる人数(列の長さ)」を見て、どこに並ぶかを決めていると思います。

スーパーマーケットのレジ
写真=iStock.com/Drazen_
※写真はイメージです

しかし、大抵は「待ち行列はどこも大差ない」はずです。レジの処理速度が早ければ、その分待ち人数は減っていくため、たくさんの会計処理ができるところほど人が流れて頻繁にお客さんが来ます。

つまり、「そのレジにお客さんがどのくらい頻繁にくるか(A)」ということも、「レジ係の手際の良さ(B)」に依存しているといえるでしょう。その時点での「レジごとの待ち行列の長さ」を見るよりも、「どこがスムーズに回転しているか」を見極めたほうが、早くレジを通過できます。

では、どこのレジがスムーズに回転しているのかの見極め方を紹介します。