死者が一番多いのは1月

【鳥集】いずれにせよ、毎年の死亡者数の統計を踏まえて考えた場合には、例年の冬の死亡者数を大きく超えることはないと言えそうですね。

【森田】はい。たぶんそうなるでしょう。

【鳥集】昨年1年間のコロナ死亡者数は3459人でした。それが、今年1月だけで2200人以上亡くなりました。この事実だけ見ると、この冬にものすごい勢いで死亡者が増えたように見えます。しかし、例年、6月に比べると1月は4万人以上死亡者数が増えるわけですから、全体で見るとコロナはごくわずかしか、死亡者数の増加に寄与していないことになります。

【森田】おそらく、アメリカやイギリスなど欧米では、超過死亡が出ると思うんです。でも、日本は欧米のレベルまではいかない。日本も「感染爆発」って大騒ぎしていますが、たとえ今のペースで増えたとしても、そこまでにはならないと思います。

【鳥集】アメリカではこの冬、一日の陽性者数が20万人を超えた日もありました。一方日本では、東京で2000人、全国で5000人を超えただけで大騒ぎです。もし1万人を超えるようなことがあったら、一般の人たちはパニックを起こすかもしれません。

しかし、冷静に数字を見れば、毎年インフルエンザで亡くなる人の数と大きく変わるわけではありません。それに、毎年およそ10万人が亡くなる一般的な肺炎と比べると、コロナの死亡者数は圧倒的に少ないことになります。

【森田】そうですね。逆にこの冬はインフルエンザの患者さんが全然出ていませんので、その分、死亡者数は減る可能性もあります。

消毒剤ボトル
写真=iStock.com/AnanR2107
※写真はイメージです

「マスクと消毒」の思わぬ副作用

【鳥集】それも不思議ですよね。みんなが店の入口でアルコール消毒をするとか、マスクを着けているという効果でインフルエンザが激減したのなら、本当はインフルエンザワクチンなんか要らないのではないかと思ってしまいます。

【森田】そうかもしれないですね。僕はインフルエンザが減った理由は2つあるのではないかと考えています。一つは、みんなが今のような感染予防を徹底しているから。そのためインフルエンザだけでなく、他の風邪や感染症も全部抑えられている。ただ、それでもコロナだけが抑えられていないという事実があります。

それを踏まえると、もう一つの理由としては、やはり「ウイルス干渉(*5)」が起こっている可能性が考えられる。今はコロナの勢いが強いから、コロナに占拠された細胞には、インフルエンザウイルスは感染することができない。手の消毒以上に、インフルエンザが縄張り争いで負けているほうが強いのではないかと僕は思っています。あまり研究がされていないので、想像の範囲にすぎませんが。

(*5)ウイルス干渉……一つのウイルスが大流行していると、他のウイルスが感染しづらくなるという現象。