犯罪にはなんらかの遺伝的要因がある
サイコパスの扁桃体は、正常者のそれよりも体積が18%低下していることが報告されている。扁桃体の体積の低下は、恐怖感情の低下と関連していることが想定されている。つまり、罪を犯してもそれに見合った恐怖を感じないということである。
極度の虚言癖者の前頭前皮質は、正常者のそれよりも体積が22%増加していることも知られている。前頭前皮質は「相手の心を読む」「思考力」と関係があるといわれており、サイコパスがどうすれば他者を騙せるか、一般人以上の思考力を使って、判断していることがうかがえる。
暴力性の遺伝率は、一卵性双生児と二卵性双生児の比較研究から40~45%程度であるとされている。実の親の犯罪件数は、子供の犯罪件数と相関するが、それはたとえ里子に出された子供であっても、依然として高く相関することも知られており、犯罪になんらかの遺伝的要因があることは明確である。
「少数派が人類を進化させてきた」という仮説
社会的に許容された少数派が人類を進化させてきた、という進化心理学的な仮説も存在する。例えば、偉人のほとんどは発達障害の傾向があったのではないか? とする言説がある。アインシュタイン、エジソン、モーツァルト、ビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、スティーブ・ジョブズ、彼らの記録を紐解くと、おそらく発達障害の傾向があったと考えられる。人間にとって本当に重要な発見は、発達障害という少数派が相対的に、比率的により多く切り開いてきた可能性があるのだ。
ここで、凶悪犯罪者が発達障害だという意味で述べている訳ではないことには注意が必要である。私がいいたいのは、脳には強い個性があるという事実だ。凶悪犯罪者を賞賛することは全くしていない。彼らは法によって裁かれるべきだ(ただし死刑が最適かどうかは私にはまだわからない)。
しかし、人類の長い歴史を見ると、犯罪を犯さない範疇で脳に強い個性を持つある種の異常者(犯罪者は含めたくない)が、そのままでは閉塞した存在になりかねない人類を、新しい地平に導いてきた可能性もあるのかもしれないのである。