おのれを活かす場所を獲得するのは自分自身

バッティングには目をつぶり、俊足を買った赤星憲広、やはりバッティングには難があったものの守備と野球の理解度に見るべきものがあった宮本慎也らは、まさしくそうやって地歩を築いていった選手たちだ。

誰しも自分の武器をもっている。しかし、それを活かすには、戦うためのフィールドに出ることが前提となる

自分を活かす場所は、ただ与えられるのを待っているだけでなく、自分から獲得しようとしなければならない。

そのためには、どうしたら声をかけてもらえるか、上司はなにを欲しているのかを探り、ならば自分はどこを、どのようにアピールすればいいのか考え、それに徹することが大切なのである。

自分で長所だと思っていることが必ずしもそうとはかぎらない

「おのれを知ることが大切だ」と私が常々いうのは、自分では長所だと思っていることが、実際にはそうでないケースが意外に多いからという理由もある。

かつてヤクルトスワローズに土橋勝征という選手がいた。どのポジションでもこなすことができ、何番でも打てるユーティリティプレーヤーとしてヤクルトの日本一に貢献してくれた。

太陽に向かってこぶしを上げる女性のシルエット
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

まじめな銀行員のような風貌だった土橋だが、じつは新人のころは長距離バッターだったらしい。自分でも長所は“そこだ”と思い込み、バットをブンブン振り回していたという。実際、ファームではそこそこホームランも打っていたようだ。

しかし、私の見たところ、とてもホームランバッターのタイプではなかった。長距離砲として伸びるとは思えなかった。そこで彼にいった。

「ヒットの延長がホームランだ。ホームランが欲しいなんて、絶対に考えるな。ヒットを打つことに専念しろ。そうすれば──」

私は続けた。

「使い道が出てくる」