かつての65歳より“健康で元気な”現在の75歳
「死ぬまで働くなんて、そんなことができるの?」と思われるかもしれませんが、十分可能です。
何より、動物はそうしています。日本は世界でもっとも労働環境に恵まれている国です。
毎年、200万人前後の団塊の世代が労働市場から退出しているのに、参入してくる新社会人は100万人ちょっとです。定年を廃止して高齢者も働かなければ社会がもちません。
加えて医師の言によれば(日本老年学会と日本老年医学会による2017年1月の提言)、現在の75歳はかつての65歳より元気なのです。死ぬまで楽しく働ければ、お金をそれほど貯める必要はないんですね。老後のためにお金を貯めようという発想自体が間違っていると、僕は思います。
「人が足りないといっても、求人があるのは若い人だけだ」という声もあります。しかし、それは、地方の実情を知らない人のいうことです。
東京はそうだとしても、地方はまったく違います。僕はいま大分県別府市に住んでいますが、地方の人手不足は惨状といっても決して過言ではありません。地方の経済同友会などでは「どんな人でもいいから働きにきてほしい」という声ばかりです。本当は若い人のほうが望ましいのかもしれませんが、もはやそんな“贅沢”をいっている余裕はないのです。
「働けば」老後資金の心配はしなくていい
日本の完全失業率は、2017年に2.8%と3%を切り、働く意思があれば職に就ける「完全雇用状態」が続きました。2019年には2.4%まで下がり、有効求人倍率は1.60倍になりました。これはアベノミクスの成果だといわれましたが、実際は人口構成の変化によるものです。
コロナショックの影響で一時的には失業率は上昇していますが、中長期的に見れば、労働者にとって日本は実に恵まれたマーケットであるということに変わりはありません。
このような話をすると、金融機関の人からは「出口さんはつくづく金融機関の敵ですね」と冗談をいわれます。「僕の話はおかしいですか」と聞くと、返事は「いや、本当は私もそう思います。でも、年金は将来もあるとは限らないよ、だから老後資金づくりに投資しましょう、といわないと、われわれも商売にならないんですよ」と。冗談半分としても、由々しい話ではありませんか。