ドルコスト平均法より簡単で効果的な方法

私たちはどうでしょうか。投資や貯蓄をしている人でも、それほど明確な目的意識を持ってはいないのではないでしょうか。アンケート調査の結果を見ると、貯蓄の目的は「不時の出費への備え」という回答がもっとも多く、次いで「老後の生活への備え」「特に目的はない」となっています(ゆうちょ財団「家計と貯蓄に関する調査」2018年)。

出口治明『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)
出口治明『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)

「老後の生活への備え」は比較的具体的な回答ですが、それ以外は漠然としています。老後のためとはいっても、日本にはかなりよくできた公的年金保険制度がありますから、実際には老後資金は自分たちで思っているほど必要がありません。

つまり私たちは、将来や老後について抱いている現在の漠然とした不安を解消したいという心理で貯蓄を行っているわけです。

そうであれば、このテーマは、「投資か貯蓄か」とは違う視点で捉えることができます。すなわち、「将来や老後に対する不安を少しでも減らすにはどうすればいいのか」と、問いを立て直せばいいのです。

その問いであれば、ドルコスト平均法よりもっと簡単で効果的な方法があります。「働くこと」です。

寝たきり老人がいるのは日本くらい

働けば何がしかの収入が得られるので、確実にお金を殖やせます。働いていれば体力の低下も防止できます。

毎日ウォーキングやジョギングをして健康に留意しようと思っても、雨が降ったら「今日はやめておこう」となりがちです。しかし、仕事であれば「今日は雨が降っているから行きません」ではすまされないので、我慢して出かけるしかありません。それが体力維持に役立ちます。健康寿命が延びます。

僕は、高齢者になって体力が落ちる最大の原因は働かないことだと考えています。それは自分と同年代の友人を見ていてもわかることです。寝たきり老人がいるのは日本だけです。『欧米に寝たきり老人はいない』(宮本顕二・宮本礼子、中央公論新社)という本が出ているので、興味のある方は一読してみてください。

一生何かしらの仕事をしていれば、老後の不安は大きく低減されます。それがもっとも効果的な“投資法”といえます。