農水省でも「飲食接待」が明らかになった
問題は総務省だけではない。総務省の接待が問題になった最中の2月25日、農林水産省は枝元真徹・事務次官ら幹部職員6人を減給などの処分にしたのだ。贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛・元農水相と鶏卵大手「アキタフーズ」の秋田善祺代表(当時)の会食に同席し、1人あたり2万円を超える飲食接待を受けたというもので、国家公務員倫理規程に違反するとされた。野上浩太郎・農水相は大臣給与を1カ月自主返納すると発表した。
処分は枝元次官、水田正和・生産局長、伏見啓二・大臣官房審議官が減給1カ月(10分の1)、渡辺毅・畜産部長、望月健司・農地政策課長が「戒告」の懲戒処分となり、犬飼史郎・畜産振興課長が訓告となった。すでに退職している富田育稔・前畜産部長は処分対象ではない、とした。
秋田代表は鶏卵事業に対する国際的な規制の動きに日本政府として反対するよう依頼、結果的に規制適用は見送りになっている。農水省が権限を持つ業務に関する依頼を受けた飲食接待だったということで当時の大臣と共に起訴されている。そうした依頼の場に官僚が同席すること自体、アウトである。東北新社の場合も菅首相の長男で総務大臣の秘書官経験者という「政治」と「官僚」そして「業者」が同じ席で政策について話しているわけで、まさに「政・官・業」の癒着そのものと言っていい。
昔の高級官僚は、身の律し方を知っていた
どうも霞が関には、ノーパンしゃぶしゃぶ事件で将来を嘱望された官僚が退職に追いやられ、自殺者も出し、大臣らのクビが飛び、役所自体も看板を掛け替えざるを得なくなった「教訓」は、もはや残っていないのだろうか。
23年前に比べると、明らかに処分の甘さが目に付く。大臣は辞めるどころか、痛くも痒くもない大臣報酬のカットだけ。衆議院議員としての報酬はガッチリもらい続けている。官僚もさすがに退職金をもらって辞めた後に再登用された山田氏は辞任に追い込まれたものの、他の高級官僚は誰も辞めていない。
ノーパンしゃぶしゃぶ当時の高級官僚の中には、辞職して退職金を返上した人もいた。辞めた後も誰も頼らず、司法修習に行って弁護士資格を取ってその後を生き抜いた。当時の官僚は身の律し方を知っていたということだろう。
霞が関の接待問題は、まだまだ広がりを見せそうだ。23年前と比べて国民の怒りはそれほどでもない、などと高を括っていると、深刻な政治不信、官僚不信に直面する事になるだろう。