23年を経て、官僚たちと業者の癒着が復活

それから23年、霞が関の官僚たちと業者の癒着が、いつの間にか復活していたことが明らかになった。

菅義偉首相の長男で、菅氏が総務大臣だった時に政務秘書官を務めていた菅正剛氏が、「東北新社」の統括部長兼子会社の取締役として、総務省幹部の接待に同席。総務官僚たちは当初、総務省の許認可権限に関わるような話はしていないと「癒着」を否定したものの、文春オンラインが衛星放送についての会話をしていた音声を公開。総務省は「国家公務員倫理規定」に違反したとして懲戒などの処分を行った。

谷脇康彦・総務審議官と吉田真人・総務審議官、秋本芳徳・情報流通行政局長は減給3カ月(10分の2から10分の1)、湯本博信・官房審議官や衛星放送担当課長ら4人は減給1カ月(10分の1)、戒告2人、訓告・訓告相当2人の合計11人を処分した。武田良太総務相は大臣給与3カ月分の自主返納、黒田武一郎・事務次官は厳重注意だった。

総務省の調査では、11人を含む計13人が2016年以降、39回にわたって東北新社から60万円超の接待を受けた。13人のうち1人は倫理規程に反していないと判断。もう1人は山田真貴子・内閣広報官で、総務審議官時代の19年11月に7万円超の接待を受けたが、総務省を退職しているため、同省の処分対象外だとしている。山田広報官は当初続投を表明、菅首相も容認する姿勢を見せていたが、急きょ、辞職した。ちなみに、東北新社側も社長が辞任、菅正剛氏も部長職と子会社取締役を解任された。

東北新社は氷山の一角だった可能性がある

山田氏が翻意して辞職した背景には、業者からの接待が東北新社にとどまらず、他にもあったという報道が出そうだ、という噂が流れ始めたことがありそうだ。

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そんな最中、文春オンラインが続報を放った。谷脇総務審議官ら複数の幹部が、NTTグループの澤田純社長らから高額な接待を受けていたという内容だった。朝日新聞の報道によると、NTT広報室は「(報じられた)会食を行ったことは事実」と認めたという。

谷脇氏は国会質疑で、他の放送事業者や通信事業者と会食したことがあることは認めたものの、「国家公務員倫理法に抵触する恐れがある会食をした事実はない」と強調していた。だが、NTTはれっきとした総務省の利害関係者。文春オンラインの報道には、谷脇氏のほか、総務省国際戦略局長の巻口英司氏に加え、山田氏の名前もあった。山田氏は1人あたり約5万円、谷脇氏は計3回、17万円超の接待を受けたという。

国家公務員倫理規程では、利害関係者が費用を負担する接待は禁じられているほか、割り勘でも1回1万円を超える飲食は事前の届け出が必要だが、届けは出ていなかったという。

どうやら総務省の官僚が業者から接待を受けるのは、大物政治家の長男だったから、という「特殊事情」ではなかったということのようだ。東北新社は氷山の一角だった可能性がある。特定の官僚ではなく、歴代の総務審議官が接待に応じている。総務審議官は事務次官に次ぐナンバー2の権力者だ。それが当たり前のように業者から接待を受けているのだ。