J1昇格はないが、J3降格もない
——それでもホーリーホックは、2020年シーズンは22チーム中、9位。2019年は7位で最後までJ1参入プレーオフを争いました。経営規模を考えると大健闘ですね。
確かにクラブの予算と勝ち点を計算すると、コストパフォーマンスは高いといえます。でも、決して褒められた話ではありません。ホーリーホックはJ1に昇格したことはありませんが、J3に降格したこともない。成績が安定しているために、経営への危機感が高まってきませんでした。
——経営面ではほかのクラブとどんな違いがあるのでしょう。
2020年シーズンでJ2優勝、J1昇格を決めた徳島ヴォルティスは、大塚製薬という責任企業を持っています。責任企業とは、クラブ運営会社の株式のうち51%以上を持つ株主で、よくプロ野球における親会社にたとえられます。
責任企業を持たない市民クラブの戦い方
J1のクラブに目を向ければ、ヴィッセル神戸は楽天、横浜マリノスは日産自動車、名古屋グランパスはトヨタ自動車、柏レイソルは日立製作所と日本を代表する大企業が責任企業として名を連ねています。責任企業を持つクラブは、たとえ赤字になっても補填を期待できますし、責任企業から人材派遣を受けるなどで経営規模も大きくなりやすい環境にあります。
しかし水戸ホーリーホックは責任企業を持たない市民クラブです。このため経営規模はJ2クラブの平均の半分以下にとどまっています。とはいえ、J1の経験があるモンテディオ山形、ヴァンフォーレ甲府も市民クラブです。ホームタウンの人口もほとんど同じです。それにもかかわらず、売り上げはわれわれのほぼ倍です。
ホーリーホックのホームタウンは、茨城県の県央9市町村で人口は約75万人。しかも県民の給与所得は全国で8位。市民クラブとして発展できるポテンシャルは十分にあると感じています。(後編に続く)
(聞き手・構成=ノンフィクションライター・山川 徹)