正月の全国高校サッカー選手権で準優勝した青森山田は、他の複数の競技でも全国区の実力を持つ。高校スポーツのウオッチャーであるライター相沢光一氏は「私立校を中心にスポーツ強豪校は全国に数多くありますが、青森山田以上の実績とプロ選手の輩出数を誇るのが埼玉栄です」という――。
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高校スポーツウオッチャーが語る「年末年始の大会で残念だったこと」

「春の甲子園」選抜高校野球大会の出場32校が決まった(3月19日開幕)。日本高校野球連盟は徹底したコロナ対策をするため、組み合わせ抽選会はリモート、甲子園練習や開会式の入場行進も行わず、チケットはすべて前売り指定席で密を避けるという。

その意味でいえば昨年、高3になった球児や、他の競技の選手たちは気の毒だった。

甲子園は春・夏とも本来の形では実施されず、陸上・水泳など多くの競技を行う高校総体(インターハイ)も中止に追い込まれた。「部活は高校まで」と心に決め、高3の大会を競技生活の集大成として臨む生徒は多い。今回の甲子園は開幕時の状況次第では変更の可能性もあるが、球児たちがプレーできるのはなによりだ。

2020年の高校スポーツイベントに関しては、会場を無観客にするなどの対策で年末から年明けにかけては関係者の努力によって、全国大会が開催されるようになった。

サッカー、ラグビー、駅伝、バスケットボール、バレーボール、ホッケー、アメリカンフットボールなどだ。選手たちは全国大会を開いてもらったことに感謝し、全力プレーを見せた。それによって生まれた好試合も少なくない。

とくに次の3つの試合は白熱した好ゲームだった。

●バスケットボール・ウインターカップ2020(全国高等学校バスケットボール選手権大会)男子決勝:仙台大付属明成(宮城)—東山(京都)
●第99回全国高校サッカー選手権決勝:山梨学院青森山田
●全国高校アメリカンフットボール選手権大会決勝(「クリスマスボウル」):佼成学園(東京)―関西学院(兵庫)

いずれも最後の最後までどちらが勝つか分らない息詰まる熱戦だった。高校アメフトは注目度がやや低い競技のせいかあまり話題にならなかったが、終了2秒前のロングパスでタッチダウンが決まる劇的な試合となった。

厳しい状況を乗り越えて大会が開催され、選手がそれに応えるプレーをしたからこそ、これらの好試合が生まれたともいえる。

強豪校・青森山田サッカー部監督はなぜ炎上したのか

しかし、残念な出来事もあった。好試合として挙げたサッカー選手権の決勝での青森山田・黒田剛監督が試合中に「(相手選手の)スローインの邪魔をした」「ピッチで唾を吐いた」と、ネット上で「指導者としてふさわしくないのではないか」と物議を醸したのだ。

この一件をAERA dot.が〈これも戦術?高校サッカー決勝戦で“違い”が浮き彫りになった監督の「マナー」〉(1月14日公開)と題した記事でサッカーライターの見解を交えて詳述すると、さらに批判の声が高まった。

これに対して黒田監督はAERA dot.編集部に「事実が違います」と連絡し、弁明。その内容が翌日に公開された(青森山田サッカー部・黒田剛監督インタビュー「マナー問題は誤解。あのとき起きたことは偶然だった」)。ただ、そこに謝罪と受け取れる言葉はなく、「苦しい言い訳をして正当化しているのでは」と再び炎上状態になったのだ。

黒田監督にも言い分はあるだろうが、好試合に水を差してしまったことは事実だ。なんとも後味が悪い。