八重樫永規は現在、社長代行という肩書である。2011年11月を目途に正式に社長に就任し、田邊耕二は会長に就任する予定である。田邊は「半年間の状況を見て、引き継いでも大丈夫かどうかの判定をしなければならない。引き継がせる以上は全部の役割を任せる」と言い切る。
ユーシンは、将来の成長に向けた事業構造改革の途上にある。海外拠点の拡大という攻めの経営だけではない。国内の生産拠点や研究開発拠点を12年に稼働する広島県呉市の新工場に集約し、他の生産拠点を閉鎖するという大規模なリストラ計画を発表している。
「コアとなる開発から生産技術部門を一カ所に集約し、そこで開発した技術を海外に移転するという流れをつくりたい。当然、国内の生産要員や営業がいらなくなり、国内人員は半分以下になるでしょう。すでに2年前に4年後にはそうなると従業員にも伝えています」(田邊)
事業構造改革と並んで今取り組んでいるのが、年功賃金を完全に廃した世界標準の職務給の導入だ。すでに同社は職務給型の賃金制度を導入しているが、年功色を払拭し切れていない。新制度を導入するために10年、外部から人事部長を招いたが、田邊は力量不足の烙印を押した。そんなことで現在、同社は人事改革に取り組める有能な人事部長を募集中である。
新経営陣には、様々な課題が待ち受けている。大滝は「現場が新経営陣を受け入れ、対話を始めることが何より重要。でなければ新社長を飛ばして、会長やオーナーに相談を持ちかけるケースが頻発する事態になりかねない」と指摘する。
では実際に新経営陣について役員や社員はどういう印象を持っているのか。益森祥は「社長、副社長代行のお二人は、自動車業界におられた方ではありません。特殊な業界というとおかしいですが、完成車メーカーをトップとする形ができています。その中での部品メーカーという立場を理解いただいて一緒にやっていくことになると思うので、そのへんを我々としてもバックアップしていきたいと思っています」と語る。