東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言に非難の声が相次ぎ、メディアやSNSでも議論が続いている。発言の背後に潜む、日本社会の問題はどこにあるのか、働き方の視点から女性問題に取り組むジャーナリストの白河桃子さんと、ツイッターでこの問題について積極的に発信する広告関連の会社員、笛美さんが語った――。

※対談は、音声SNS「Clubhouse」(クラブハウス)で、公開取材として行われました。

15万7425筆を集めた、森前会長の女性蔑視発言への抗議の署名を東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に提出した後、記者会見する発起人の一人の能條桃子さん=2021年2月16、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
15万7425筆を集めた、森前会長の女性蔑視発言への抗議の署名を東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に提出した後、記者会見する発起人の一人の能條桃子さん=2021年2月16、東京都千代田区

Clubhouseで思いを吐き出す女性たち

【笛美】「もう、森さんが(組織委員会会長を)辞任したんだからいいじゃないか」という人もたくさんいますが、私たちはそういうことを言っているんじゃない。日本中あちこちにいる、「森さん的な存在・空気」をどう変えるのか、構造をどう変えるかという話をしているんですよね。

【白河】そうなんです。ただ、私は、その構造の話をする前に、一つやっておくべきことがあるんだなと感じました。

森前会長の発言のあと、私はClubhouseでいろんな部屋に顔を出しているんですが、あちこちで女性たちが、それぞれの体験や思いを語っています。みんなが自分の体験を言わないと、たぶん次に進めない。これまで抑圧して「ないもの」としてきた思いを、言語化して表現し合うというプロセスが必要なんじゃないかと。

【笛美】これまで吐き出せなかったんですよね。

笛美さんの自画像。森前会長発言の後、笛美さんはツイッターで、「わきまえない笛美」を名乗っている=笛美さん提供
笛美さんの自画像。森前会長発言の後、笛美さんはツイッターで、「わきまえない笛美」を名乗っている=笛美さん提供

【白河】知っている人同士で吐き出す場というのはあったと思うんですよ。でも、Clubhouseというのは不思議な場ですね。たまたまその部屋で一緒になっただけで、知らない人ばかりということもあるわけです。立場や環境、考え方も違っていて、必ずしも吐き出すものの内容がかみ合うことばかりではない。でも、特にモデレーターの人が上手だと、違うからといって攻撃し合うこともなく、いろんな思いを聞いて共感したり学び合ったりできる。

【笛美】そこはわかります。

私も今までずいぶんセクハラにあってきましたが、「#MeToo」のときは言えなかった。性被害について語るのって、すごく難しかったと思うんですよ。

でも時代が少しずつ変わってきたように思います。『82年生まれ、キム・ジヨン』の映画が公開されたときには、「私だけじゃなかったんだ」と泣いた人がたくさんいた。そんなふうに、女性の悔しさや悲しみをシェアできるような世界が、ちょっと広がってきたのかなと思いますね。

【白河】そうですね。完全にみんなが同じ思いで一致するのは難しいけれど、変わってきました。