それに加えて有力とされるのは、マンダレーで治安当局の取り締まりを撮影した際、「イー、アル、サン」と中国語の掛け声が聞こえた動画が一気に拡散した。これを見たミャンマーのネットユーザーたちは「国軍を中国軍が支持している証拠」と訴えている。

「中国式ネット規制が始まる」と戦々恐々

これらの情報について一つずつ見ていこう。まずインターネット規制だが、国軍が国民らのオンライン上でのやりとりを制限するため、連日深夜帯はネット接続が一切遮断されている。今後は当局による監視や遮断をより進めるため、「金盾」と呼ばれる中国製ファイアーウォールの導入を図るだろうと市民間でまことしやかに語られている。

よく知られているように、中国のファイアーウォールは西側諸国で広く使われているGoogleやFacebookといった、検索エンジンやSNSの使用ができなくなるよう仕掛けられている。ミャンマーの若者たちは、友人らとのやりとりや日々の一般ニュースの入手など「ネットでやれることのほぼ全て」をFacebookに依存しており、これを止められることで五里霧中に放り込まれたと感じる人も多そうだ。

中国政府が飛行機で連日、国軍に装備や人員を提供しているという噂の信憑性だが、前述の「軍人輸送、IT技術者のミャンマー入り」といった話があるとしたら、その足をどうするか、という問題が頭をもたげてくる。

筆者が、ミャンマー筋の話としてこの「謎のフライト」の存在を最初に聞いたのは2月14日のことで、その頃から幾度となくヤンゴン空港から昆明長水国際空港へとミャンマー・エアウェイズ・インターナショナル(MAI)の旅客機が往復しているのが確認できている。

以上のような「中国の関与」の噂が広まる背景には、国軍に対するミャンマー国民の自虐的な批判が混じっている。「あの国軍が、中国の後ろ盾でもなければクーデターなど敢行するわけがない」とパワーバランス上の弱さを茶化している節もあるからだ。

サポーターの結束
写真=iStock.com/El-BrandenBrazil
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中国大使は「ばかげている」と一蹴したが…

中国の陳海駐ミャンマー大使は2月15日、「政変」後初となるインタビューに応じ、「中国による関与の疑念」が市民の間で広がっていることについて「全くもってナンセンスで実にばかげている」と一蹴。中国とミャンマー間を往来する航空機はあくまで通常の貨物便であるとし、「中国は常にミャンマーの農水産物の重要な輸出市場だ」と強調した。

こうした中国大使による反論を信じるか、実際にミャンマーで起こっている状況についての報道内容を信じるかはさておき、はっきりしているのは「現在起きている局面は、中国にとっておもしろくない状況」であると想像できよう。