「国民の大半がクーデターを支持していないことは明らか」

2月18日付の産経新聞の社説(主張)は「スー・チー氏を解放せよ」との見出しを掲げ、冒頭部分で「国民の大半がクーデターを支持していないことは明らかだ。軍はスー・チー氏や他の拘束者を解放し、権力を民主体制に戻さなければならない」と訴える。クーデター後の2回目の社説である。

ミャンマー国軍は中国の習近平政権との関係が深く、財政援助も受けているらしく、いったん政権を握ると、なかなか離そうとはしない。それゆえ、断固として日本や欧米の国際社会が解放と政権返還を強く求めなけなければならない。

東南アジアの地図の上に人民元
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産経社説は指摘する。

「スー・チー氏には無線機を違法に輸入し使用した疑いがあるとされる。勾留期限切れを前に別の容疑でも訴追されたという」
「あくまで法に則った拘束だと言いたいのだろうが、これで国民や国際社会が納得すると考えているのなら滑稽である。『でっち上げ』(ジョンソン英首相)と一蹴されて仕方あるまい」

当初、スー・チー氏は小型ラジオを不法に輸入して無許可で使ったとして輸出入に関する法律違反の罪で訴追された。今度は自然災害管理に関する法律に反したとの容疑をかけられた。新型コロナの流行下で多くの人々が参加する選挙活動を行ったことがこの法律に違反するというのだ。

なんという茶番だ。形だけの些細な容疑を積み重ねることによってスー・チー氏の拘束を長引かせ、民主化運動に圧力を加えたいのだ。しかし、時間を稼いでもミャンマー国民の軍事政権に対する反発心は消えない。消えるどころか、ますます強くなるはずだ。

中国との交流を止めない限り、ミャンマーの真の独立はない

産経社説は書く。

「不可解なのは中国やロシアがこの出来事を『クーデター』と呼ばないことだ」
「中露がメンバーの国連安全保障理事会は報道声明を出しただけで、そこには『クーデター』も『非難』もなく、人権理事会の決議にも盛り込まれなかった」

中国やロシアはしたたかだ。顔で笑って腹の底では相手国を蹴落とすことを考えていることがある。ずる賢く立ち回ることもある。それだけに国際社会は中露の言動に注意を払うべきだ。

産経社説は「中国と国境を接し、インド洋への出口にあたるミャンマーは、膨張の圧力を肌で知っているはずだ。近年、中国と距離を取ろうと試みたのは、過度の依存の危うさを警戒したからではないのか」と書いたうえで、最後にこう指摘する。

「それでも、中国の擁護を期待するなら、これは国民に対する許しがたい裏切りである」

中国はミャンマー国軍だけでなく、スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)にも触手を伸ばしている。中国との深い交流を止めない限り、ミャンマーの真の独立はない。