怖いからこそ、本を読み漁り、情報を集められた

怖いからといって、出社しないわけにもいかない。入社してからも怖い怖いとばかり言っていても仕方ない。じゃあ、どうすればいいんだ、と考えた。

とりあえず、ヤフーのリーダーを育成するからには、どんなリーダーが求められているか探ろうと思った。バカみたいだが、ここで僕は「待てよ。ヤフーってインターネットの会社だよな」と改めて認識した。これまではプラスにいて、インターネットビジネスのことはよくわからない。そこで、尾原和啓さんの『ITビジネスの原理』(NHK出版)という本を必死で何回も読んだ。

さらに、リーダー開発の仕事もやったことがないから、関連書を読み漁った。もちろん、ヤフーの現状についても情報を集めた。

そうすると、「今、この会社で求められているのはこういうリーダーだ」という仮説を立てることができた。仮説があれば、人と話せる。

ここまでやってようやく、なんとか出社初日を迎えることができた。

そして、ドキドキしながら挨拶まわりの1週間がはじまった。

「どんな仕事をされているんですか?」という質問に加えて、「ヤフーで求められているリーダー」についての仮説があるから、それをネタにして会った人と話すことができる。「こんな感じですか?」「なるほど、そういうことなんですね」という会話が成り立つわけだ。

他人の目には「伊藤のやり方はすごい」と映った

幸いにも、挨拶まわりをしながらいろいろな人と話していくうちに、「どうも自分の仮説は正しい」という感触を得ることができた。

伊藤羊一『ブレイクセルフ 自分を変える思考法』(世界文化社)
伊藤羊一『ブレイクセルフ 自分を変える思考法』(世界文化社)

そこで、Yahoo!アカデミアに所属する30人くらいにアポをとった。そして、1人1時間くらいかけて、その仮説に基づいてヒアリングをしていった。

リーダー開発について、「私はこう思うんだけど、現状だとこういうところが足りないと思いませんか?」とか、「ヤフーだと、こういうやり方はどうですか?」と、さらに仮説をぶつけては精度を上げていく。

これもやっぱり、後で「入社早々、30人にアポをとってヒアリングをする人はいない」と言われた。「イケてるコンサルタントの仕事の進め方ですね、あれは」とも。

言われてみればそうかもしれないけれど、僕としてみれば、仮説を立てなければ怖くて出社もできない。人と会って話さなければ何をしていいかわからないし、そうすると居心地の悪いままぼんやりと座っていなければいけないことになる。ただ怖いからやっただけだ。それが、他人の目には「伊藤さんのやり方はすごい」と映ったわけだ。

Seed&Water
あらためて、もう一度。
仕事をしていくうえで、あなたが恐れていることはなんだろうか?
なにが怖いだろうか?

その恐れにどう対処するか。
それが、あなた独自の「表現」のスタイルを生み出すかもしれない。
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